シーンと静まり返った休憩室。従業員はスマホを眺め、イヤホンで耳を塞ぎ、会話はない――。多くの職場の昼休みにみられる光景です。実は、休憩のとり方が職員のパフォーマンスを大きく左右することをご存じでしょうか? 本記事では、野本果甫氏の著書『人材育成はフィードバックが9割 部下が自走して成果を出すリーダーシップの在り方』(ごきげんビジネス出版)より、3つの事例とともに、パフォーマンス向上に直結するモチベーションの上げ方を解説します。
「休憩のとり方」を変えただけ…米銀行コールセンターが受注13%増、コスト12億円削減できた理由 (※画像はイメージです/PIXTA)

1.休憩のとり方でパフォーマンスが上がった事例

矢野和男氏の著書『データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』(草思社)には、受注のコールセンター(オペレーターがお客さまに電話をかけて注文をとるコールセンター)の実験で、電話でのセールスによる受注件数について、何が影響しているかを調査した結果が報告されています。

 

当初は出勤したオペレーターの平均スキルが高い日の受注件数が多くなるのでは、と予想していたそうですが、休憩時間に休憩所で活発な会話がされていると受注件数が高く、活発でない日は少ない、という結果になったそうです。そこで同世代の4人チームで休憩を同時にとるようにしたところ、休憩中の活発な会話が増え、受注件数が13%も向上した、という結果になったそうです。

 

アメリカの銀行のコールセンター(顧客からの問い合わせに答えるコールセンター)でも、それまでばらばらにとっていた休憩をメンバーができるだけ同じ時間にとるようにしただけで生産性が最大20%向上し、12億円のコスト削減につながった、という結果が記載されています。

 

私が関わってきたコールセンターでも、休憩時間のとり方の効果を感じたことがあります。

 

離職率が少ないコールセンターと離職率が高いコールセンターで、休憩時間の過ごし方に大きな違いがありました。離職率が少ないコールセンターでは、昼食をとる休憩室でオペレーターが集まる場所が自然発生的に決まっていて、お昼休みになると、みんなそこに集まるようになっていました。そこで仕事のこと、お客さまのこと、プライベートのこと、などを楽しそうに話しています。新人オペレーターにとっては、先輩社員に仕事のことを聞いたり、悩みを聞いてもらったりする場にもなっていました。

 

コールセンターが不便な場所にあり、仕事自体はかなりストレスの高いものでしたが、離職する人はほとんどいませんでした。