「部下がなかなか育たない」「指示待ちで動いてくれない」――多くのリーダーが抱えるこの悩みの解決策として、「支援型リーダーシップ」や「1on1ミーティング」が注目されています。しかし、良かれと思って導入したものの、かえって現場の負担を増やし、形式的な運用に陥っているケースが後を絶ちません。本記事では、野本果甫氏の著書『人材育成はフィードバックが9割 部下が自走して成果を出すリーダーシップの在り方』(ごきげんビジネス出版)より、「自走する部下」を育てる際に直面する課題を解説します。
飲みニケーションの代わりにできた「昭和生まれの中間管理職」が会社から強制される「超・苦痛な時間」 (※画像はイメージです/PIXTA)

1on1ミーティングがうまくいかない理由

多様化する価値観にあわせて部下育成をするための手段として、1on1ミーティングを導入する企業が増えてきました。しかし次のような問題が起こっています。

 

1.リーダーへのスキルアップ施策が十分でない

いちばんの問題は、リーダーがこれまで1on1ミーティングを受けたことがないのに、しなければならない立場になっていることです。リーダー自身が上司との1on1ミーティングで効果を感じていれば積極的に行えるのです。しかし1on1ミーティング自体が新しいもので、組織のなかで誰も経験したことがない状況からスタートしています。効果的に運用するには、コーチングのスキル、つまり「傾聴力」「質問力」「フィードバック」といったスキルが必要です。

 

多くの企業では数時間から1日程度の研修を受講しただけで、リーダーに1on1ミーティングをさせています。リーダーとしても、短い研修を受講しただけで実践することを求められ、これでいいのか? いままでの面談と何が違うのか?と悩みながらしている状況です。

 

昭和のマネジメントにおける面談では、上司が一方的に話して部下がそれを聞く、というスタイルが主流でした。そのためリーダーは自分が経験してきたとおり、一方的に話していることが多いのです。部下にとっては上司の話をずっと聞き続ける時間となり、1on1ミーティングが苦痛の時間になっています。

 

2.形式的な運用になっている

リーダーも部下も1on1ミーティングの効果を感じることがなく、むしろ苦痛になっている状況で「会社からやるように言われているからやる」という感じになり、形式的な運用になっていることも多いです。そのため「やることが目的」になり、本来の目的である部下の成長支援や信頼関係構築が十分に果たされていない状況が発生しています。

 

また、ただの業務報告の場、進捗確認の場、など本来の1on1ミーティングの目的に沿った内容になっていないことも多く見られます。

 

3.時間の確保が困難

忙しい業務のなかで定期的な1on1ミーティングの時間を確保するのが難しい、という課題もあります。

 

とくに中間管理職が多忙を極める環境では、重要なのはわかっていても締め切りがないため緊急性は下がり、後回しにされがちです。リーダーにとって「1on1で何を話したらいいかわからない」「部下が話してくれないので進めにくい」など心理的な弊害がある場合は、なおさら後回しになります。

 

 

野本 果甫

サクシードビュー代表

 

※本記事は『人材育成はフィードバックが9割 部下が自走して成果を出すリーダーシップの在り方』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。