「部下がなかなか育たない」「指示待ちで動いてくれない」――多くのリーダーが抱えるこの悩みの解決策として、「支援型リーダーシップ」や「1on1ミーティング」が注目されています。しかし、良かれと思って導入したものの、かえって現場の負担を増やし、形式的な運用に陥っているケースが後を絶ちません。本記事では、野本果甫氏の著書『人材育成はフィードバックが9割 部下が自走して成果を出すリーダーシップの在り方』(ごきげんビジネス出版)より、「自走する部下」を育てる際に直面する課題を解説します。
飲みニケーションの代わりにできた「昭和生まれの中間管理職」が会社から強制される「超・苦痛な時間」 (※画像はイメージです/PIXTA)

自走する部下を育てるために適したリーダーシップ

「自走する部下」とは「自分で考えて行動し、会社やチームが求める結果を出せる部下」です。あなたの部下の8割が自走する部下になってくれたら、どんなに楽になれるでしょう。自走する部下を育てるためには、どのようなリーダーシップが適しているのでしょうか。

 

リーダーシップにはさまざまなスタイルがあり、どれが正しくて、どれが間違い、ということはありません。自分の性格にあうスタイル、あわないスタイルがありますし、リーダーは状況に応じてスタイルを変える必要もあります。

 

自走する部下を育てるには、支援型リーダーシップがいちばん適していると思います。支援型リーダーシップとは、部下の目標達成を支援することで、組織から求められる成果を出すリーダーシップです。日本の組織は指示型のリーダーシップがまだまだ多いと感じています。マネジメントするうえでは指示することも必要ですが、指示するだけでは自走する部下は育ちません。指示型リーダーシップで育ってきたリーダーにとっては大きなチャレンジになるかもしれませんが、いままでのやり方をなくすのではなく、支援型リーダーシップを部下育成に取り入れることで、対応の幅を広げてほしいと思います。

 

部下育成の本質を突いた言葉として、山本五十六氏の名言があります。皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

 

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。

 

山本氏は太平洋戦争のときの連合艦隊司令長官です。まわりの人から尊敬される人格者だったことでも有名です。この言葉から部下の成長を支援するリーダーの姿勢が伝わります。これほど的確に、誰でもわかる言葉で、人を育てるための本質を突いた言葉はほかにないと私は思いますし、昔もいまも人材育成の本質は大きく変わらないものだと思うのです。

 

私も昭和のマネジメントで育ってきたひとりですが、本当にできる上司は山本氏の言葉どおりに部下に接していたと感じます。厳しく叱られることもありましたが、必ずあとでフォローをしてくれました。当時は飲みニュケーションが活発な時代でしたので、飲み会の場で失敗したことを励ましてもらったり、上司の体験談を聞いたり、仕事では見せない上司のやさしさに触れたりしたことも、厳しさに耐えられた要因だったと思います。ベテランビジネスパーソンが飲み会好きなのは、そういう理由があるのでしょう。

 

しかしいまのリーダーは飲みニュケーションを若手に強要できないため、仕事の時間でコミュニケーションをとることを求められています。そのひとつが1on1ミーティングなのですが、これがリーダーの悩みのひとつにもなっているのです。