部下が育たない、どのように接していいかわからない……。現在のリーダー層は価値観の異なる若手社員を相手に、自らが受けてきた昭和のマネジメントとは打って変わったマネジメントを行わなければなりません。その難しさに直面し、頭を抱える組織のリーダーは多いでしょう。本記事は、野本果甫氏の著書『人材育成はフィードバックが9割 部下が自走して成果を出すリーダーシップの在り方』(ごきげんビジネス出版)より、令和の若手社員が育たない理由について解説します。
昭和育ち・中間管理職まで登りつめた“就職氷河期世代”…「なぜ、若手が次々辞めてしまうんだ!」と上司から板挟み。「成果が出せない部下をほめて伸ばせと?」 (※画像はイメージです/PIXTA)

いままでのやり方では部下が育たない

現場のリーダーのよくあるお悩みとして、次のような声が聞かれます。

 

・ 若手社員がすぐに辞める。

・ 言われたことはそつなくこなすが、自分で考えて動けない社員が多い。

・ 働き方改革により、仕事の量は減らないのに残業時間が制限され、ますます忙しくなっている。部下に仕事をまかせて時間内におわらないと自分が引き取るしかない。

・ パワハラになるリスクがあるので叱れない。

・ ほめることが大事といわれるが、成果が出せない部下にほめることは本当に有効なのか?

 

組織でリーダーになる方は、会社や上司が優秀と認めた方です。プレイヤーとして成果を上げてきた優秀なリーダーが、このような悩みをなぜ抱えてしまうのでしょうか?

 

理由のひとつには、世の中の価値観が大きく変わっているのに対して、日本のマネジメントがそれにあわせて変わりきれていないことがあります。現在のリーダー層はバブル世代(50代後半)と就職氷河期世代(40代〜50代前半)の方がメインです。バブル世代は昭和時代のリーダーに育てられていますので、そのマネジメントスタイルを引き継いでいます。就職氷河期世代は厳しい環境を生き抜いてきており、なおかつ昭和のマネジメントで育っていますので、やはり昭和のマネジメントを踏襲しているのですね。

 

昭和のマネジメントは次のような価値観に基づいています。

 

・ 最初に入社した会社で最後まで過ごすのがスタンダード。

・ 上司や先輩からの叱咤激励が当たり前の指導。ほめる環境はほぼない。

・ 成果を厳しく求められる。やり方は先輩の姿を見て学ぶ。丁寧に教えてもらえるわけではないので、自らつかみにいく。

・ 上司や先輩との本音の会話は飲みニュケーションでする。飲みの誘いは断らない。

・ 上司に気に入られるかどうかで評価や職場の居心地が決まるので、上司との関係はとても大事。多少理不尽なことがあっても我慢する。

・ プライベートより仕事優先。長時間勤務は当たり前。仕事がおわっていないのに帰るなんてあり得ない。やる気がないと見なされて当然。

 

リーダー層は昭和のマネジメントで苦労しながらも成長してきた、という自負があります。自信もありますので、自分が育ってきたように部下に接する方もまだ多いことでしょう。会社の環境にもよりますが、就職氷河期世代のリーダーに育てられた30代のリーダーも、ほかにロールモデルがいないため、疑問を感じながらも昭和のマネジメントを踏襲している、という構造になっています。

 

つまり働き方改革やハラスメント対策の導入で、日本の組織は変わりつつありますが、マネジメントにおける価値観はあまり変化していないのです。価値観があまり変わっていないなかで、働き方改革だ、ハラスメント対策だ、1on1だ、などと新しい価値観が入ってくるため、いまのリーダーが苦しむことになっているように感じます。