ダイエットや健康管理のために、「揚げ物や油の多い肉はなるべく摂らないようにしている」という人は多いでしょう。しかし、その考えは誤解です。医師の尾形哲氏の著書『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術【増補改訂版】』(KADOKAWA)より、50代女性の事例をもとに、脂肪肝を防ぐため積極的に摂るべき「具体的な食品」と、「牛乳や豆乳をそのまま飲んではいけないワケ」を紹介します。
栄養豊富な「牛乳」「豆乳」だが…医師が“そのまま飲むのはやめて”と止めるワケ【肝臓専門医が警告】
〈本記事の登場人物〉
■永島 亜紀さん(51歳・女性)
身長149cm。残業続きで多忙な日々を送っている。食べすぎや飲みすぎの習慣がないにもかかわらず、肥満・脂肪肝専門外来「スマート外来」を受診したところ「脂肪肝炎(MASH:代謝機能障害関連脂肪肝炎)」だと診断された。医師によれば、脂肪肝の原因となる「中性脂肪」は意外なものからつくられているようで……。
「脂身」より「ブドウ糖」のほうが、脂肪になりやすい
「先生、私は中性脂肪を減らそうと肉や唐揚げなどの揚げ物を減らしているんですが、それでもだめなんでしょうか?」
「先ほど、中性脂肪のもとはブドウ糖だとお伝えしましたね?」
「ああ、そうでした! でも、油は関係ないんですか?」
「厳密に言えば、関係ないことはありません。ただ、肝臓にたまる脂肪の8割以上は、食べた油や肉の脂身ではなく、ほかの要因によって作られたものなのです」
「え? てっきり油脂が脂肪を増やすんだと思っていました」
「肝臓にたまる中性脂肪の構成要素は、60%は皮下脂肪や内臓脂肪が溶け出したもの。26%がブドウ糖からできるもの。14%が食べ物から摂取する油脂です。だから、中性脂肪に変換されやすい糖質を減らすのが先です」
「では、肉は食べていいということですか?」
「はい。糖質量が過剰にならないようにすることも大切ですが、亜紀さんは、タンパク源となる食品をもっと積極的に食べたほうがいいでしょう。筋肉の成長にはタンパク質が欠かせません。だから、肉、魚、卵、大豆食品といったタンパク質を豊富に含む食品を取り入れてください」
「どれくらいのタンパク質が必要ですか?」
「筋肉量を維持するために必要なタンパク質の量は、1日に体重1kgあたり1g分です。亜紀さんの必要量は58gです。筋肉量を増やしたいので、少し多めの60gを目標にしましょう」
「はい」
「食事で摂ったタンパク質はアミノ酸に分解後に腸で吸収され、血液に乗って全身に運ばれます。そこで筋肉細胞に届けられたアミノ酸が、筋肉の合成に使われます。だから、筋肉を増やすためにタンパク質が欠かせないのです。ですが、アミノ酸から筋肉に合成する能力は加齢とともに低下するため、若いとき以上に摂取量を増やす必要があるんです」