暑さの厳しい毎日、食欲がわかず、つい手軽な栄養補給の手段として野菜ジュースやゼリー飲料、エナジードリンクなどを利用する人は多いでしょう。しかし、医師の尾形哲氏はこれらの行動に警鐘を鳴らします。尾形氏の著書『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術【増補改訂版】』(KADOKAWA)より、50代女性の事例をもとに、飲み物が肝臓におよぼす影響をみていきましょう。
夏バテ対策のつもりが肝臓に大ダメージ!?…医師が「野菜ジュースを飲まないで」と警告する理由【専門医が“肝臓が喜ぶ飲み物”を紹介】
〈本記事の登場人物〉
■永島 亜紀さん(51歳・女性)
身長149cm。残業続きで多忙な日々を送っている。食べすぎや飲みすぎの習慣がないにもかかわらず、肥満・脂肪肝専門外来「スマート外来」を受診したところ「脂肪肝炎(MASH:代謝機能障害関連脂肪肝炎)」だと診断された。「健康のために」と思って飲んでいた野菜ジュースや栄養補助食品について、医師からまさかの助言をもらうことに……。
肝臓に優しい3つの飲料
「亜紀さん、普段、栄養を摂るために飲んでいるという飲料はすべてやめてください。野菜ジュースも飲むヨーグルトもゼリータイプの栄養補助食品も。かまずに飲むものから栄養を摂ることは、肝臓の火に油を注ぐ危険行為です」
「体のためによかれと思っていましたが……」
「確かに栄養を効率よく摂れる気がしますね。でも、清涼飲料水やゼリータイプの栄養補助食品、エナジードリンクには、砂糖よりも甘みが強い果糖ぶどう糖液糖という糖分が含まれていることが多いです。飲み物でこうした糖分を摂ると吸収スピードが速く、血糖値も急上昇。エネルギーを余計に吸収しやすいんです」
「それはとても恐ろしいです」
「それだけではありません。ゆっくり吸収されれば問題になりにくい果糖も、吸収スピードが速いと肝臓を直撃して大きな損害を与えるんです」
「……。そうなんですか。では、何を飲めばいいのでしょう?」
「水、無糖のお茶、ブラックコーヒーはOKです。この3つから選べば、もれなく肝臓が喜びます」
「わかりました。よいものを限定していただけると迷わずに済みます」
「よかったです」
「スープも避けたほうがいいですか?」
「具がごろっとたっぷり入っているものならおかずとして大歓迎。サラサラとしたポータジュスープは積極的には飲まず、もし外食などで出されるときはスプーンで1口ずつ口に運んでください。それだけで吸収スピードが変わりますよ」
かんで食べることさえ億劫になっていた自分が恥ずかしい。
〈先生からの処方箋〉
効率のよさ、栄養密度の高さ、タイパがよいほど肝臓をいじめる結果に。
尾形 哲
長野県佐久市立国保浅間総合病院
外科部長/「スマート外来」担当医