〈本記事の登場人物〉

■山口 真理子さん(45歳・女性)

40代半ば過ぎの独身看護師。仕事の忙しさやストレスからくる不摂生な生活がたたり、体重は増加。疲れやすさや体の重さを感じて検査を受けたところ、肥満・肝機能障害・高血圧を指摘されてしまい、肥満解消と脂肪肝・糖尿病改善を専門とする『スマート外来』を受診することに。前回の受診で食事の問題は解決したが、次の問題は……

筋肉がない人は「筋トレ」にチャレンジ

「体重はともかくタンパク質は以前より摂れているし、今回はもう1つ取り組むとよいことをお話ししますね。それは運動なんですが、真理子さんはそもそも運動が嫌いなわけではないですよね」

「はい。でも、今は体が重くて取り組めていません」

「体を動かさないと、やはり筋肉は落ちてしまいます。デスクワークではないから、ある程度お仕事で体を使うこともあるでしょうが、それでも筋肉量は平均より少なく、疲れやすいことにも多少影響しているかもしれません」

先生によると、減量に取り組む時点で筋肉量がどれくらいあるかによって、運動を取り入れるタイミングも違ってくるのだという。

運動なしで減量すると1カ月目から脂肪とともに筋肉も減少します。脂肪量と筋肉量はどちらが先に減るということはなく、ある程度同時に減るんです。

もともと筋肉量の多い肥満の方は、1~2カ月間、筋肉量が減ってもさほど問題はありません。運動なしでも、タンパク質不足に注意するだけでよいでしょう。

真理子さんの場合は、筋肉量が少ないので、これ以上筋肉量を減らしてはいけません。それには、筋トレを取り入れる必要があります

「筋肉」はダイエットの強い味方!

「ウォーキングとか、有酸素運動ではだめなんですか?」

「何もしないよりはいいですが、筋肉の量が増えると、基礎代謝を上げてくれて減量の成果も出やすくなります。真理子さんには、食後30分以内に実践するスロースクワットをおすすめします。ゆっくり体を上下しながら1分間行ってください」

「やっぱり運動なしではだめですよね」

「筋肉はダイエットの強い味方ですよ。食後血糖値が抑えられますので、食事で摂った糖が脂肪に変わるのを抑えられます

運動なんて絶対ムリだと思い込んでいたが、1分ならできるかもしれない。

「自宅なら食事の前後にテレビでも見ながらちょっとがんばってみる。あるいは勤務先で誘える人がいれば一緒にやってみるのはどうですか? 仲間同士で一緒に取り組むのもダイエットを成功させる秘訣ですよ」

同期のSちゃんの顔が浮かんだ。ポリポリとお菓子をつまみながらダイエットしなきゃねえと話しているより、一緒にスクワットをするほうが前向きだ。

「運動のメリットは、リバウンドを防ぐこともできる点です。真理子さんのように骨格筋量がもともと少ない人は、短時間でも筋トレの効果が得られます。注意点としては、最初はイスやテーブルにつかまって行ってくださいね」

診察室に入ったときは世界の終わりのごとく悲壮な気分だったが、先生のおかげで再び前向きな気持ちを取り戻し、もう一度やってみようと思えるようになった。

〈先生からの処方箋〉

 運動習慣がないなら、スロースクワットがおすすめ。