【第2回】「プチ整形」ブームの代償。市場拡大が招いた“美容医療・安売り競争”のワナ(全10回)

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聖心美容クリニック
【第2回】「プチ整形」ブームの代償。市場拡大が招いた“美容医療・安売り競争”のワナ(全10回)
※(画像はイメージです/PIXTA)

かつて「人に言えないこと」という風潮にあった美容医療。しかし、「プチ整形」という言葉の登場やSNSの普及を追い風に、その市場は爆発的に拡大し、多くの人が気軽に施術を受けられる時代になりました。一方で、その急成長は大きな“代償”も伴いました。クリニックの急増が招いた過剰な価格競争は、やがて業界の信頼を揺るがす事態へと発展していきます。本稿では、聖心美容クリニック統括院長の鎌倉達郎氏の著書『信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より、「プチ整形」ブームがもたらした光と影、そして業界が陥った“価格競争”の実態について解説します。

美容医療を受けることがオープンになってきた

クリニック側の情報発信についての意識や方法が変化するのと同時に、この30年ほどで、世間の美容医療への印象も大きく変わってきています。近年は美容医療を受けたと公言する芸能人やインフルエンサーもいらっしゃるほどオープンになり、当院でも多くの著名人が全国のクリニックに来院されています。

 

受け止める側の人々もかなり柔軟になりましたが、私がこの世界に入った1990年代後半から2000年あたりの頃は、美容医療を受けたという事実は家族や知人にも話すことができないような風潮がありました。

 

都市部では人口が多く、他人への意識がそれほど濃密でない面もありますが、それこそ私が生まれ育った九州などでは、美容クリニックに入っていく姿を知り合いに見られただけで、すぐに噂が飛び交ってしまうような状況でした。

 

私が最初に所属した大手美容クリニックでは出張で鹿児島院に行くこともありましたが、そこに宮崎県からの患者様が訪れたことがありました。地元のクリニックに行くところを見られたら恥ずかしいということで、わざわざ県をまたいで来院されていたのです。現在でも皆無とはいえませんが、当時はそれほど閉鎖的な空気が強く、美容医療を受けるのは悪いこと、恥ずかしいことであるかのような扱いを受けていました。

 

そうした空気が変わってきたのは、本当にこの数年ほどではないかと思います。その契機となったのはタレントや有名人が美容医療の受診を公表するようになっただけではなく、インフルエンサーや、一般人でも発信力のある方たちが美容医療を受けたことをSNSで公言し、ポジティブな情報を広く発信するようになったことです。

 

また、2000年代になると、レーザー脱毛という施術が日本に入ってきました。それまではクリニックでは針脱毛が行われており、エステでは出力の弱い光治療が主流でしたので、レーザー脱毛は脱毛市場において画期的な方法でした。レーザー脱毛は永久脱毛が可能であるため、今ではごく一般的な脱毛方法として広く行われるようになりましたが、美容医療の中でもこの脱毛に関しては、誰でも公表しやすい空気が早い時期からあったように思います。

 

美容医療をテーマにしたテレビ番組の影響も大きく、フジテレビ系で放送されていた『B.C. ビューティー・コロシアム』という番組も、多くの方々の意識を変えたように思います。人気芸能人がMCを担当し、美容医療のプロが多数登場したこの番組では、容姿にコンプレックスを抱えていた一般の出演者が施術でそのコンプレックスを克服するという内容でした。人生を変えたいと願う人たちが毎回登場し、美容医療によってその願いを叶えられたという構成に、多くの人気が集まりました。

 

しかしながら、番組の最後には「この番組は美容整形を推奨するものではありません」という趣旨のテロップが流されていました。このことから、当時はメディアにおいて美容医療がどのような扱いを受けていたかがよく分かります。番組でエンターテインメント的に紹介してはいても、決して推奨するわけではない、あくまで自己責任で、というわけです。それでも、この番組によって、美容医療の認知度が上がったことは確かだと思います。

 

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※本連載は、鎌倉達郎氏の著書『信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと

信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと

鎌倉 達郎

幻冬舎メディアコンサルティング

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