未来の美容医療業界は明るいだろうか
私は日本美容外科学会(JSAS)という学術団体の理事長を務めています。ここは診療科目を問わず、幅広く美容医療に従事する医師が集まる学会です。会員数は2024年12月現在で約1800人ですが、会員データを基に医師免許取得から入会までの年数を調べると、ここ3年程度の集計ですが3年以下の割合が30%を超えていました。
このデータからも直美(ちょくび)の増加が分かります。2年間の初期研修を終えてすぐに美容医療に来たり、初期研修後に専攻医にはなったものの、1年未満で辞めて美容医療に来たりしたケースも直美と定義すると、会員の3分の1ほどになる実態が、JSASが調べた範囲の中で出てきました。
日本には美容医療に関するカリキュラムがありません。そのため、初期研修を受けただけの直美ドクターは入職したクリニックで独自の技術やモラルを学ぶことになりますが、クリニック運営側の考えによっては、技術を磨くよりもビジネス的な志向に寄ってしまうケースがあります。
そこでJSASが連携して立ち上げたのが美容医療従事者の専門育成機関AMA(一般社団法人エステティック・メディカル・アカデミー)です。今泉明子先生という高名な皮膚科の専門医がおられるのですが、私がJSAS理事長に就任したタイミングで人材育成機関設立の相談を受け、私も大いに賛同し、今泉先生を代表理事として設立に至りました。
医師だけでなく看護師や看護助手、クリニックのスタッフも指導を受けられるのが特徴ですが、内科を開業されているとか皮膚科を開業されておられるなど、美容医療に従事されていない医師でも入会できるようになっています。
ここでの活動は主に、オンラインによるセミナーと実践トレーニングです。解剖学や注入治療の基礎から応用、美容医療の安全性とトラブル防止に向けた取り組み、モラル等について専門医が指導します。
私はAMAでは顧問を任されているのですが、講師の先生方はいずれも開業医で、皆さんお忙しい合間を縫って指導にあたってくださっています。美容医療業界をもっと良くしたいと思っておられる方ばかりなので、ほとんどがボランティアに近い形でお手伝いくださっているのですが、ここにも利他の精神が息づいていると思います。
AMAにできることは限られているかもしれませんが、日本に美容医療に関するカリキュラムがないのであれば、そのぶんを私たち経験者が補っていかなければならないと思っています。こうした取り組みが明日の美容医療につながっていくのだと信じているのです。
