「直美=悪」ではないが、できるなら経験を積んでほしい
講演をした際の学生との会話の中で、一つだけ考えさせられた質問がありました。直美に関する質問です。
一般的な医師のキャリアパスは、医学部を卒業すると2年間の初期研修を受けます。それを終えると、次は外科、内科、形成外科、皮膚科などの専門分野を選択し、専門医の資格を得るための専門研修プログラムに移るのですが、このプログラムを受けずにすぐ美容医療に従事されるドクターもいらっしゃいます。研修プログラムを受けずに直接美容医療に従事するので「直美(ちょくび)」と呼ばれるのですが、これは決して違法ではありません。
学生からの質問も、「専門研修プログラムを受けるのと美容外科に入るのは同じことではないのですか」というものでした。厳密には違うのですが、学生の質問ももっともで、「なるほど」と一瞬思ってしまいました。学術的には形成外科の一分野として美容外科があるのですが、質問した学生だけでなく、美容外科と外科、形成外科を同じようにとらえている学生はそれなりにいるようでした。
2年の初期研修を終えたらすぐに美容医療に入りたいと思うドクターが増えているのも分かりますし、実際、数も増えています。しかし、私としては専門研修プログラムに進み、専門医の資格を取得したほうがいいと思っています。
これは日本のカリキュラムの課題にもつながるのですが、例えば外科にしても、一般外科や形成外科、心臓外科、脳外科等々の診療科に進んだ場合、総合病院でも大学病院でもしっかりと経験を積ませるカリキュラムが備わっています。カリキュラムに則って指導を受け、専門医の資格を取るシステムが確立されているのですが、美容外科にはそうしたカリキュラムがないのです。
