【第8回】「つべこべ言わずに打て、金ならある!」深夜の修羅場で貫いた、若き外科医の譲れない一線(全10回)

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聖心美容クリニック
【第8回】「つべこべ言わずに打て、金ならある!」深夜の修羅場で貫いた、若き外科医の譲れない一線(全10回)
※(画像はイメージです/PIXTA)

多くの人にとって美容医療が身近な選択肢となった昨今。しかし、不適切な治療法や悪質なアップセルなど、業界全体の信頼を揺るがす事件やトラブルの報道は未だ止むことはありません。本稿では、聖心美容クリニック統括院長・鎌倉達郎氏の著書『信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より、美容医療業界の健全化を促すうえで必要なことを紐解いていきます。

若き日のケンカ?の思い出

私はケンカっ早いほうではないと思っているので、特にこの美容医療の世界に入ってからは、他人ともめた記憶はほとんどありません。ただ若手だった外科時代には、一度だけ福岡の病院で激しい言い合いになったことがありました。それは私が当直だったときのことで、深夜に男性が運び込まれてきました。見ると、お酒の飲み過ぎによる急性膵炎のようでした。

 

その男性は、上司と部下らしき方々といらしたのですが、一見したところ、どうにも堅気の方々には見えなかったのでちょっと怖い感じもしました。私が対応すると「腹が痛いから、とにかく〇〇を打ってくれ」と言ってきました。

 

どこでそんな知識を仕入れてきたのか、男性が挙げたその薬品は、膵炎には打ってはいけないものでした。医療従事者としてそれはできないので、私は頑として断りました。すると男性は病院のフロア中に響き渡るほど声を荒らげて「つべこべ言ってないで打て、金ならある」とすごんできます。どんなに脅されようと、打つことはできないと言い続けました。投与したらどうなるかも説明したのですが、まったく聞いてくれません。

 

しかし最後にはその男性のほうが折れました。「先生はメチャクチャ頑固だけど、マジで俺のことを考えてくれているのだな」と仰っていたので、私の気持ちは通じたのだと思います。

 

一歩間違っていたら、どんなことになったか分からないような状況でした。思い返すだけで「若さというのは怖いな」と思います。しかし今、同じ場面に出くわしたらどうするかと考えると……やはり同じように対応すると思います。悪化すると分かっている処置をするわけにはいきません。

 

あのときの私は内心でビクビクしていましたが、どんなに脅されようと屈してはならないと自分自身に言い聞かせていました。最終的に患者様が理解してくださったので事なきを得ましたが、患者様の言いなりになっていたら、私はプロとしての道を踏み外していたかもしれません。患者様と激しい言い合いをした経験はあのときの一度きりですが、言い合いになったことより、駆け出しのドクターながら患者様の体を第一に考えていた自分をちょっと誇らしくも思うのです。

 

あれから何十年もの月日が流れましたが、若かりし日の私は、今も私の中に息づいていると思います。それが私のクリニックが掲げている「患者様ファースト」のポリシーにつながります。私たちのクリニックでは常に患者様を第一に考え、ビジネスを優先させるようなことは決してしません。この先もしないと自信を持っていえます。

 

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※本連載は、鎌倉達郎氏の著書『信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと

信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと

鎌倉 達郎

幻冬舎メディアコンサルティング

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