パートナーを信じ、家庭を守ることに専念してきた日々。その献身が、必ずしも安定した未来を保証してくれるわけではありません。ある日突然、離婚という形で人生の岐路に立たされたとき、自分の足で生きていくができるでしょうか? 本記事では倉本さん(仮名)の事例とともに、熟年離婚のリスクについて、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
甘かった…「生活費月20万円」を渡してくれていた56歳公務員夫に見捨てられた53歳専業主婦。辱めを受けた「人生初の就職活動」【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

残された「家」と「現金200万円」…50代専業主婦、初めての就職活動

幸い、これまでどおり家に住み続けることはできましたが、明子さんを待っていたのは厳しい現実でした。長年の住宅ローンや子どもの教育費の支払いで、夫の貯蓄は200万円程度。家に住み続けることを選択したため、明子さんへの現金の財産分与はほとんどありません。

 

「夫が老後の準備もしてくれるだろう」と信じ、自身の貯蓄は生活費から捻出した“へそくり”程度しかなかった明子さん。30年間お金の心配なく暮らしてきましたが、突如として自力で収入を得る必要に迫られたのです。

 

ハローワークへ通い、求人情報を探すものの、なんのスキルもない50代の専業主婦に務まる仕事はなかなかみつかりません。ハローワークの職員からも「未経験でしょう。パソコンにすらほとんど触ったことがないんですよね。これまで働いたことがないと、条件を下げるしかありません」と告げられ、明子さんは恥ずかしい思いでいっぱいになりました。「甘かった……。仕事を探すだけでこんなに大変だとは」表情は暗くなっていきます。事務職の求人をみても、面接に行くことすら不安に感じるように。

 

「このままでは貯蓄が底をついてしまう……」

 

焦りと不安で自分を見失いかけた明子さんでしたが、なんとか近所のスーパーでレジ打ちのパートの仕事が決まります。月収は約10万円。決して十分な額ではありませんが、貯蓄の取り崩しが減ったことで、精神的には少しだけ楽になりました。明子さんは、もう少し収入の多い仕事を探し、就職活動を続けていこうと決意しました。