パートナーを信じ、家庭を守ることに専念してきた日々。その献身が、必ずしも安定した未来を保証してくれるわけではありません。ある日突然、離婚という形で人生の岐路に立たされたとき、自分の足で生きていくができるでしょうか? 本記事では倉本さん(仮名)の事例とともに、熟年離婚のリスクについて、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
甘かった…「生活費月20万円」を渡してくれていた56歳公務員夫に見捨てられた53歳専業主婦。辱めを受けた「人生初の就職活動」【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

熟年離婚を夫から切り出され…

ある日、智彦さんが真剣な面持ちで「話がある」と明子さんに切り出しました。もともと夫婦の会話は少なく、喧嘩もありませんでしたが、そのただならぬ雰囲気に明子さんは息をのみます。

 

「これからは自分のやりたいことを優先したい。もう君とは、夫婦としてやっていく自信がないんだ。家を出ようと思うから別れてくれ」

 

「夫婦として」という言葉の裏に、『妻として、女性として、もう君には魅力を感じない』という本音が透けてみえ、明子さんは言葉を失い、茫然とするばかりでした。「時間をください」と絞り出すのが精一杯で、寝室に逃げるようにこもりました。

 

後日、改めて話し合いの場を設けても、夫の意思は固く、覆りません。結局、智彦さんが家を出ていく形で別居が始まり、離婚は避けられない状況となりました。