詐欺被害のニュースに触れるたび、「どうして騙されるんだろう?」と疑問に思う人は少なくないでしょう。しかし、「自分だけは大丈夫」という自信こそが危険な落とし穴になりかねません。甘い誘惑に、人は驚くほど脆いからです。行動経済学を悪用する詐欺師たちは、あなたの心の隙を緻密に突き、気づけば全財産を奪い去る巧妙な手口で迫ってきます。本記事ではAさんの事例とともに、LINEを使った特殊詐欺について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
「資産1億円」夢のFIRE実現間近の50歳サラリーマン、早期退職も…2ヵ月後、元職場へ懺悔の復職直談判。人生を壊した「LINE通知」の正体【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

詐欺対策、5つのチェックポイント

警視庁のホームページでは、特殊詐欺対策として気を付けるポイントがあげられています。

 

・投資先が実在しているか、国の登録業者かどうか

・「必ずもうかる」「あなただけ」といった文言に注意

・投資を勧めている「著名人」がなりすましではないか

・投資に関係する「暗号資産」や「投資アプリ」等が実在するか

・振込先の口座に不審な点がないか

 

Aさんは愕然としました。投資先が実在しないどころか、あらゆるチェックポイントに該当していたにもかかわらず、甘い誘惑に安易に乗ってしまったことを激しく後悔します。親から相続した大切な土地を担保に入れ、さらにこれまでの貯蓄もゼロ。どうやって生きていけばいいのかと、Aさんは完全に途方に暮れてしまいました。

 

すっかり意気消沈し、取り返しのつかないことをしてしまったと落ち込むAさん。両親が生前、「楽して稼げる仕事はない。お金は降ってこない」と口にしていたことを思い出します。

 

Aさんは恥をしのんで、わずか2ヵ月で元職場へ復職直談判にいきます。元職場の社長はAさんの親と同じ世代。事情を酌んで、温情で元の鞘へと戻してくれました。

 

「本当に浅はかでした。これからは親の言葉を肝に銘じて、人生をやり直します」と、Aさんは語ります。Aさんのように、甘い勧誘をきっかけに冷静な判断力を失ってしまうことは誰にでも起こり得ることです。周りがみえなくなってしまうことのないよう、信頼できる誰かに相談することが重要です。

 

〈参考〉

警視庁の特殊詐欺対策ページ「SNS型投資詐欺」

https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/investment/#example

 

 

三藤 桂子

社会保険労務士法人エニシアFP

代表