子どもの幸せを願う親の気持ちは、いつの時代も変わりません。しかし、その「幸せ」の形は、時代とともに大きく変化しています。親世代が信じた成功の道。一方、子世代が信じるのはまったく異なるものだったら……。この価値観のギャップに、戸惑いを覚える親は少なくないでしょう。本記事では社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が、Aさんの事例とともに子の経済的自立と幸せな親子関係を築くためのヒントを探ります。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
月収25万円・40代サラリーマン…ランチは298円のコンビニ飯、散髪は妻のバリカン。涙ぐましい努力で娘を有名私大に通わせるも、卒業後の進路に唖然「MBTIで決めた」娘の発言に更なる唖然【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

娘に立派な学歴と就職先を

Aさんは40代のサラリーマン。田舎の高校を卒業し、最初の就職先は地元の零細企業でした。ですが、都会への憧れもあり、20代前半に一念発起して東京へ出てきました。地方出身の高卒だったためか、都心ではなかなか就職口がみつからず、やっとの思いで、都内の小さな町工場に就職します。

 

下町の古いアパートに暮らしながら、頑張って働き、その間、行きつけの居酒屋で知り合った妻と20歳後半で結婚。まもなくして娘が誕生しました。妻も地方の生まれで、高校卒業後すぐに就職したという経緯があります。「これからの時代、男女関係なく大学は出ておいてほしい。そして、できれば大きな企業に勤めて安定した人生を歩んでほしい」と一つの夢を託します。

 

高卒夫婦の18年におよぶ努力

「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、学歴別の賃金(男女計)は、高校288万9,000円、大学385万8,000円と、100万円近い差があります。Aさん夫婦の世帯年収は550万円です(Aさん一人では年収300万円・月収換算25万円)。余裕があるとはいえない家計事情ですが、夫婦は娘に自分と同じ苦労をさせたくないと、共働きして二馬力で稼ぎ、質素倹約の生活を心がけ、少しでも多く教育費に充てようとお金を捻出してきました。特にAさんは、妻も拘束時間の長い仕事があることからランチを298円のコンビニ飯で済ませ、散髪はいつも妻にバリカンで刈ってもらっています。

 

親が必死に働く傍ら、娘も期待に応えようと中学から塾に通い、勉学に励みました。その結果、娘は有名私立大学に合格し入学したのです。