景気回復やインバウンド需要の拡大を背景に、サービス業の売上高は過去最高を更新し続けています。総務省の最新統計でも、各業種がバランスよく成長し、数値上は「絶好調」と映りますその一方で、現場では人手不足や自動化の加速といった課題が深刻化しており、売上の伸びと雇用の実態との間にギャップが広がっています。
サービス業、売上絶好調は「幻想」か? サービス産業の成長を阻む「二重の課題」 (※写真はイメージです/PIXTA)

回復と拡大、その牽引役たち

総務省が2025年5月26日に公表した『サービス産業動態統計(2025年3月分速報)』によると、同月のサービス業の売上高は42.6兆円にのぼり、前年同月比で6.6%増加しました。これで41ヵ月連続の増収となります。数値上は堅調そのものですが、足元の動向からは、いくつか気がかりな側面も垣間見ることができます。

 

この増加傾向の裏側には、複数の業種がバランスよく成長しているという実態があります。特に運輸業・郵便業、情報通信業、そして観光需要の戻りを受けた宿泊・飲食サービス業の伸びが目立ちました。

 

たとえば運輸・郵便では、EC物流の好調さと人流回復の双方が寄与したと考えられ、48ヵ月連続で増収という記録は単なる一時的なブームではないことをうかがうことができます。

 

情報通信業も好調。クラウドや業務系システムの需要が続いており、DXという言葉の定着とともに、こうしたIT関連サービスの「社会インフラ化」が進行しているという印象も受けます。宿泊業・飲食サービスは13.6%増と最も高い伸びを見せましたが、これには明らかにインバウンド回復の影響。コロナ後の需要回復という文脈からも、2025年春の観光動向がどれほど盛況だったかを物語る数字といえるでしょう。

 

【月間売上高…産業大分類別(2025年3月)】

情報通信業:7,873,919百万円(4.6%)

運輸業、郵便業:6,115,812百万円(9.8%)

不動産業、物品賃貸業:6,954,946百万円(2.8%)

学術研究、専門・技術サービス業:4,974,265百万円(5.0%)

宿泊業、飲食サービス業:2,485,902百万円(13.6%)

生活関連サービス業、娯楽業:3,864,202百万円(8.8%)

教育、学習支援業:323,444百万円(▲3.3%)

医療、福祉: 5,626,990百万円(1.9%)

サービス業(他に分類されないもの)4,397,704百万円(7.9%)