(※写真はイメージです/PIXTA)
米すら買えない…「月5万8,000円」の年金生活
東京から電車で1時間半弱の町に暮らす松本良子さん(仮名・73歳)は、30代で離婚を経験。夫側に親権をとられ、以来、子どもたちには会ってもいないといいます。離婚後は工場職や清掃の仕事を転々とし、体を酷使しながらも何とか生計を立ててきたのです。
しかし高齢となった現在、松本さんが手にする年金は、わずか5万8,000円。令和7年の老齢基礎年金の満額支給額は月6万9,308円。たとえ松本さんが満額受け取れていたとしても、到底、年金だけでは生活できない金額です。家賃は古びたアパートで月2万2,000円。残った金額で光熱費、食費、日用品……と払っていくと、毎月が赤字です。
「今はお米が2キロで2,000円を超えるでしょう。高くて高くて……進次郎さんに期待するしかありませんね」と思わず苦笑い。空腹に耐えるしかありません。さらに半年くらい前は希望すら持てずに絶望するしかなかったといいます。
松本さんは週4日、早朝の清掃業務で、月3万〜4万円程度を補ってきました。しかし昨年、契約更新のタイミングで「高齢を理由に」再契約を打診されず、職を失います。さらに「この歳ではもう体力勝負の仕事は無理。でも、他に何ができるのかもわからない」と、求職活動をするも面接すら進めず、やがて気力も削がれていきました。
とても年金だけでは生活は成り立たず、生活保護を申請するしか……しかし、そこには想像以上に高い壁が立ちはだかります。
「毎月、年金だけでは生活できず、少しずつ貯金を取り崩して、取り崩して……そう生活してきたんですが、最低生活費以上の貯金があるから生活保護は難しいと」
生活保護は、まず収入が最低生活費(厚生労働省の定める最低限の生活費)に満たないことが条件。最低生活費を下回っていれば、その差額を受け取ることができます。さらに「売却できる資産や貯金がないこと」、「親族から経済的な援助が見込めないこと」も条件となります。
松本さんは当時、30万円ほどの貯金があったそうです。そのため「まだ生活できますよね」と判断されたわけです。
「貯金が底を尽かないと、助けてもらえない。それまで苦しく、不安な思いを抱いて生きていかなければならない。『思い切って貯金を使いきって、生活保護を申請しな』とアドバイスしてくれる人もいましたが、私には、そんな大胆なことはできず。何ともいえない絶望感を覚えました」