離婚時に交わした養育費や財産分与の取り決め。公正証書を作成し、法的な備えも万全――それでも貧困に苦しむ母子世帯。限界に追い込まれていく人たちの現実とは?
逃げられたら終わりです…「月収17万円」35歳2児の母、離婚2年後に待っていた「通帳残高978円」の地獄 (※写真はイメージです/PIXTA)

離婚して2年…養育費が途絶えた2児のシングルマザー

2人の子どもを育てるシングルマザーである中村美咲さん(仮名・35歳)。結婚生活は、ごく一般的なものだったといいます。共働きで、子どもたちにも恵まれ、郊外に念願のマイホームも購入。絵に描いたような幸せな家庭を築いている、そう信じて疑いませんでした。しかし、ある日突然、夫から離婚を切り出されたのです。明確な理由もないまま、夫の意思は固く、夫婦は離婚することになりました。

 

離婚協議で最も頭を悩ませたのが、財産分与と子どもの養育費です。住宅ローンが残るマイホームは夫が引き取り、中村さんは子どもたちを連れて実家に戻ることで合意しました。養育費は、夫の収入から月12万円と決まり、万が一の滞納に備えて公正証書も作成しました。これで少しは安心できる、そう中村さんは思ったといいます。

 

離婚後、中村さんは養育費に加え、月収17万円のパートの仕事を始め、生計を立てることにしました。子どもたちとの生活は、想像以上に厳しかったそうです。食費、教育費、そして何より家賃。毎月の収入は、あっという間に消えていきました。

 

それでも、夫からの養育費があるからやっていける――そういう状況でした。離婚後。大変なのは、元夫も同じようでした。「ローン返済に、養育費……自分の生活もある。そりゃあ、大変ですよね」。そして、離婚から2年が過ぎたころから、夫からの養育費の支払いが滞るようになりました。最初は「今月は少し遅れる」という連絡があったものの、次第に連絡すらなくなり、とうとう完全に支払いが途絶えてしまったのです。

 

元夫はどのような状況にいるのか……久々にかつてのマイホームを訪れて愕然とします。すでに売却され、他人の家になっていたのです。

 

「家が売れたのであれば、結構なお金を得ているはず。そのお金は私のものでもある……でもローンを払ったら、そんなに残っていないのかな。そもそも離婚後にお金を得たのなら、財産分与の対象ではない!? いや家自体は結婚前に買ったし――」

 

堂々巡りになりながら状況を整理していきますが、とりあえずわかったことは、夫とは一層連絡が取りづらくなったということでした。