孤独死と聞くと、高齢者の問題と思われがちです。しかし警察庁の最新調査から、年間約1.8万人もの現役世代が自宅でひっそりと亡くなっていることがわかりました。本記事ではSさんの事例とともに、孤独死問題について就職氷河期世代に焦点を当て、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。※相談者の了承を得て、記事化。個人の特定を防ぐため、相談内容は一部脚色しています。
俺もそのうち誰にも気づかれず死ぬのか…実は多い「現役世代の孤独死」 年収270万円・氷河期世代52歳男性の鈍痛【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

就職氷河期世代が50代を迎えている

2025年現在、就職氷河期世代が話題に上ることが増えました。就職氷河期世代とは、バブル崩壊後の1990~2000年代、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代です。1970年4月2日生まれから1983年4月1日までに生まれた人たちを指します。2025年に55歳~42歳を迎える世代です。

 

この世代は、新卒者の就職が困難を極めたことが特徴です。新卒時に希望する就職が叶わず、不本意な就職をしたのちに転職を繰り返すことになったり、最初から非正規の職業に就き抜け出せなくなったり、年齢が上がるにつれて無職の人も増えたりと、社会的な立場が不安定になっています。収入の低さ、不安定さによって結婚することができず、独身者も多いです。貧困や孤独を原因として健康状態が悪化しているケースもあります。

 

あと10年で高齢者となっていくこの氷河期世代を、社会でどう支えていくべきなのか、いまになって国も慌てています。厚生労働省はこの世代の支援に本腰を入れはじめているようです。

 

しかし団塊ジュニアを含むこの世代は人口ボリュームが大きく、社会保障で支えるのは現実的に難しいかもしれません。しかし想像している以上に厳しい生活環境に置かれている人が多く、いずれ若者世代を巻き込んだ大きな社会問題を抱えることになります。その時が刻々と迫っているのです。

 

1990年代、当時のフリーターのなかで「年金制度は破綻する、保険料は払うだけ損だ」という考え方が流行した時期がありました。現在50代の就職氷河期世代の人がいまもそう主張する場面をみかけることがあります。実際には年金制度は破綻していないし、むしろ年金未納によって障害年金を受給できなくなるなど、貧困に拍車をかける状態になっています。このままあと10年を迎えると、わずかな年金しか受け取れず、生活が破綻する高齢者が激増するでしょう。

 

無年金者もいるこの世代を社会全体が抱えることはできるのでしょうか。孤独、貧困と……この就職氷河期世代、自らの孤独死を覚悟している人もいるようです。そんなある男性の事例をご紹介します。