人生100年時代といわれる現代、健康寿命が延びる一方で、老後の住まいや暮らし方に対する意識も多様化しています。かつて「要介護になったら入る場所」と考えられがちだった老人ホームですが、近年、まだ自立した生活を送れる比較的若い高齢者層からの入居希望が増えているという実情も。本記事ではYさんの事例とともに、老人ホームの理想と現実について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。※相談者の了承を得て、記事化。個人の特定を防ぐため、相談内容は一部脚色しています。
老人ホームなんて入らなきゃよかった…年金月20万円・77歳父「GWに遊びに行くね」と宣言した娘夫婦はハワイ旅行、ぼっちで過ごす大型連休に涙腺崩壊【FPの助言】 (※画像はイメージです/PIXTA)

老人ホームへの入居を検討する「若い高齢者」が増加

老人ホームと聞くと、若い世代は「要介護度が上がった高齢者」「独居が不可能になった高齢者」が入居するものと考えがちです。確かにその傾向はあるものの、まだ自立した生活ができる健康な、比較的若い高齢者も、老人ホームへの入居を検討していることが多いのが実情です。

 

それはなぜなのでしょうか。LIFULL介護が2024年12月に実施した「介護施設入居実態調査2025」によると、老人ホーム入居時の要介護度は次のようになっています。

 

介護認定なし…5.2%

要支援1…10.7%

要支援2…13.7%

要介護1…18.9%

要介護2…19.3%

 

特別養護老人ホームの入居条件である要介護3に満たない人が、全体の67.8%であることがわかりました。介護認定なしで老人ホームに入居した人の「入居の理由」は、

 

・一人暮らしの継続が難しくなった

・介護認定を受けていたものの家族のサポートが必要だった

・入院して自宅復帰が難しくなった

・自立状態で生活できたが将来を考えて

 

などが挙げられています。介護認定は受けていないものの自宅でケガをすると今後の生活に不安感が増すものです。生活の安全と快適性を考えると、経済的な条件が許せば早い段階で老人ホームに入居したいと考える人が増えているようです。

 

しかし実際のところ、介護状態になって家族に迷惑をかけたくない、買い物や生活全般に誰かの見守りが必要だが家族に頼りたくないという思いから老人ホームを選択しても、すぐに失敗だったと気づくケースも増えています。なかにはまた自宅に戻る人も。

 

老人ホームが必ずしも自分にとって快適な住みかになるとは限らないようです。老人ホームへの入居は慎重な検討が必要かもしれません。事例をもとに解説していきます。