30代になると世帯を持つことをきっかけに、生命保険などで将来のリスクに備えようと考える人も増えてきます。しかし、世帯を持つことなど、多くの人はきっかけがなければ行動に移しづらいもので……。本記事では、木村健太さん(仮名)の事例とともに、若年層のライフプランの考え方についてFP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。※個人の特定を避けるため、内容の一部を変更しています。
四国で農家を営む年金月7万円〈60代父〉急死…1年ぶり帰郷の〈30代長男〉実家で発見した「朱色の手帳」の中身に涙【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

独身だから…

現在30歳の木村健太さん(仮名)は、関西圏の大学を卒業し、化粧品メーカーに就職しました。今年で7年目。仕事にも慣れ、休日には大学時代の友人と出かけるなど、充実した毎日を送っていました。

 

昨年と一昨年に友人が結婚し、それぞれの結婚披露宴に招待されました。新郎も新婦もよく知っている人たちです。健太さんは一人暮らしが合っているのか、いままで気楽に過ごしてきたものの、しっかりと将来を考えている友人の様子は、自分自身のことを省みるきっかけになったそうです。しかし、なかなか行動に移すことはありませんでした。

 

休日にいつものように外出していた健太さんは、一昨年結婚したAさんから、「10月に子どもが生まれるんだ」と聞かされました。

 

「そうなんだ。おめでとう! 責任重大だな」

 

Aさんは、「結婚してすぐに、奥さんと相談して生命保険に加入したよ。いまは共働きだから経済的にはゆとりがある。まあなんとか二人で頑張ってやっていくさ」といいます。

 

「生命保険か……。俺はまだ独身だし、もし結婚したらそのときに考えることにするか」健太さんにとってはまるで他人事でした。

 

「そうそう。お前にはまだ必要ないさ」Aさんも同調します。そんなことを話しながら、二人は帰路に着いたそうです。

農家を営む実家

健太さんの出身地は四国圏です。妹の彩乃さん(仮名/27歳)は、兄と同じく関西圏の大学を卒業後、関西の中学校で教員として働いています。

 

健太さんの実家は農家。父親(66歳)、母親(62歳)、祖母(88歳)の3人で米、ブロッコリー、ナス、トマト、イチゴ、ミカンなどの野菜や果物を組み合わせて栽培し出荷していました。

 

健太さんも学生時代の長期休暇の際には、手伝いも兼ねて帰省していました。社会人になってからはお盆や年末にしか帰省できず、家族と顔を合わせる機会はめっきり減ってしまっています。ときどき健太さんのところへ、両親からお米や取れたての野菜などが送られてくるそうです。毎日朝早くから働いている祖母と両親。「俺が中学生のころはおじいちゃんも元気だったなぁ」健太さんは、自分と妹を大学まで通わせてくれたことに心から感謝していました。