日本の公的年金制度は、国民年金と厚生年金の2種類があります。公的年金を受け取るのは老後だけではありません。一定の障害状態であると認定された場合に給付される障害年金や、亡くなった方の遺族に給付される遺族年金も、その後の生活を支えるための公的年金です。しかし、現行の遺族年金制度には落とし穴もあって……。本記事では清水さん夫妻(仮名)の事例とともに、遺族年金の仕組みについてFP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。※個人の特定を避けるため、内容の一部を変更しています。
家賃5万円のタワマン住まい〈世帯年収1,000万円・仲良し夫婦〉35歳夫が急死…29歳新妻、“まさかの遺族年金額”にさめざめ「情けをかけてくれてもいいのに」【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

新婚夫婦を襲った突然の悲劇

清水竜也さん(享年35)と現在29歳の真由さんは、同じ自動車関連メーカーに勤める先輩と後輩でした。所属する部署が同じということもあり、次第に意気投合するようになったそうです。真由さんは一人っ子ということもあり、結婚して実家を出ることに少なからず迷いもありましたが、竜也さんの猛アタックの末、1年ほどの交際期間を経て二人は結婚しました。

 

真由さんの年収は400万円です。真由さんは自身の母親がそうであったように、結婚後は仕事を辞め、竜也さんとの生活を中心に暮らしたいと希望を伝えました。しかし、竜也さんから「長い将来を考えたとき、共働きのほうが豊かに暮らせるし、どちらかが病気やケガをしたときに家計が破綻しにくい」と諭されます。話し合いの結果、共働きのまま生活を続けることに。

 

夫婦の年収は、二人で1,000万円。結婚後の住まいは、借り上げ社宅のタワーマンションでの生活。家賃の手出しは5万円と破格です。竜也さんも真由さんも自宅から見える眺望が気に入っていましたが、庭付きの戸建てに住むという夢があり、近いうちにマイホームを購入しようと計画を立てていました。このまま幸せな日々を送って行くのだろうと、二人はもちろん、周囲の誰もが想像していました。ところが夫の竜也さんは、結婚式の半年後、趣味の登山で事故に遭い、そのときのケガが原因で亡くなってしまったのです。

 

深い悲しみのなか、竜也さんの葬儀は行われました。真由さんは、3ヵ月ほど休職し、その後退職。両親の勧めに従い、実家に戻って暮らすことに。両親の支えもあり、真由さんは少しずつ気持ちの整理をし落ち着きを取り戻しました。

 

しばらくの月日が経ちました。そろそろ、これからのことを考えなければなりません。真由さんは、遺族年金を受け取る手続きのために相談したいと思い、年金事務所に行きました。