お金の不安は、収入の多寡だけで決まるものではありません。むしろ、十分な収入があるからこそ、それを失うことへの恐怖が人一倍強くなることがあります。本記事では池田大介さん(仮名)の事例とともに、高収入世帯に潜む「お金の悪夢」の正体と、その解決策をFP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。※個人の特定を避けるため、内容の一部を変更しています。
休日は激安スーパーはしご、手を鬱血させながら特売品を大量買い…世帯年収1,400万円だが、45歳夫の「異常な節約癖」に妻うんざり。「お金が使えない悪夢」の正体【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

父の反対を押し切った進路、甘くなかった人生

東京都近県に住む池田大介さん(45歳)。インテリアデザイン事務所に勤め、家族は、妻の香織さん(仮名/43歳 会社員)と長女(9歳)、長男(7歳)の3人です。香織さんは、アパレルブランドの店長をしています。

 

大介さんは、インテリアデザインの仕事に憧れ、高校を卒業後、東京の専門学校に入学しました。両親――特に父親は大介さんの進路に反対していました。大学に進学し自らと同じ公務員となり、安定した生活が送れることを望んでいたためです。しかし、母親の応援や大介さんの「どうしてもインテリアデザインの勉強がしたい」という熱意に根負けし、卒業したら地元に戻ることを条件に、進学を了承してくれたのでした。

 

東京での学生生活もそろそろ終わるというころ、約束どおり地元での就職を目指して就活をしていた大介さんですが、なかなか思うように決まりません。「就職できないまま卒業するわけにはいかない……」と困っていたところ、自動車メーカーに採用されます。

 

配属先は、希望する職種とは畑違いの営業職でした。それでも大介さんは、まじめに勤務し、毎日くたくたになって帰宅。しかし、どうにも職場の雰囲気に馴染めず、1年後には退職を決意。しばらくは、趣味のマラソンを続けながらアルバイトをして、次の就職先をみつければいいか、と考えていました。

 

5回目の転職でついに出会った天職

大介さん自身、決して気楽に過ごしていたわけではありませんが、同居している両親の心配は、日に日に強くなります。「いつまでぶらぶらしているんだ」「近所の人がみてるから、そんな恰好で外を歩かないで」そんな言葉に、やりきれない気持ちで過ごす毎日。

 

その後、叔父が紹介してくれた会社、自分で応募した会社など、何社か就職と退職を繰り返しました。

 

面接を受けても採用に至らない場合もあります。そのたびに気持ちが折れそうになりました。しかし、持ち前の明るさや粘り強さ、約10年の職務経験、人柄などを評価された30代。5社目にして現在の会社に正社員として就職することができたのです。比較的規模の小さな会社でしたが、そのおかげで裁量が大きく、いろいろな仕事を経験することができました。収入も毎年上がり、現在は800万円ほど。妻の香織さんと合わせると、世帯年収は1,400万円です。世帯の貯蓄は3,000万円。住宅ローンの返済額は毎月11万円で、65歳には完済予定です。頭金として1,000万円を大介さんの両親が援助してくれました。

 

将来も経済的に安定していると思われる池田家ですが、なぜか大介さんは「老後に対する不安な気持ちが大きい」といいます。