(※写真はイメージです/PIXTA)
帰省した長男を待っていた、重すぎる「土地問題」
阿部翔太さん(仮名/35歳)は、九州地方の山間部にある小さな街で生まれ、高校を卒業するまでその街で育ちました。学業は優秀な成績で、両親にとって自慢の息子です。翔太さんの希望もあり、高校卒業後は東京の大学へ進学しました。現在は大手企業に勤務する、年収800万円の会社員です。
翔太さんの父親(75歳)は、5人兄弟の長男として、祖父から広大な土地と住居を受け継ぎました。一族は代々、その土地で農業を営んで暮らしてきましたが、翔太さんが子どものころに賑わっていた街の人口は減り、父親が経営していたアパートも、いまでは8室のうち2室しか入居者がいません。
翔太さんが、8月に帰省し、いつものようにリビングでくつろいでいたところ、「翔太、ちょっと……」と母親(73歳)から声を掛けられました。呼ばれるままに奥の和室へ向かうと、机越しに父親が座っています。議題は一つ、先祖代々受け継いだ、この広大な土地の今後についてでした。
「この土地な、面積は東京ドームの半分くらいあるんだ。農業をやっていた時期もあるし、一部分を活用して、地元の工芸品を作る工場を経営していたこともある。しかし、いまでは手つかずで雑木林になってしまってな……」
父親はため息をつきます。翔太さんは、父親に頼まれ事前に用意しておいた資料を広げ、母親は、今年の固定資産税・都市計画税納税通知書を差し出しました。
「この辺りは駅からも遠く、住む人もかなり減った。評価額は驚くほど安いが、少ない年金の中から固定資産税を支払うのも馬鹿にはならんのだ」
「そうだね。宅地にするとか、土地活用を考えるのも難しそうだね」翔太さんの言葉に父親は静かにうなずくだけ。重い空気が漂うなか、父親を気遣ってか、母親は「でもね、土地があるってことは素晴らしいことなのよ」と場を和ませようとしますが、問題は税金だけではありませんでした。