(※写真はイメージです/PIXTA)
「多くは望まない」令和の専業主婦の実情
石川桃子さん(仮名/31歳、専業主婦)は、夫の翔平さん(仮名/33歳、会社員)、6歳になる息子の3人家族です。桃子さんは、小学生のときから成績優秀な子どもでした。ですが、「バリバリ働いて出世したい」といった野心とは無縁のタイプ。仲良しの友人に合わせて、地方の街から関西圏の有名私立大学に進学しました。
そこで出会った翔平さんは、同じ大学の先輩です。「高望みせず、普通に暮らせればそれが一番」という価値観が合い、桃子さんが卒業するのを待って、結婚することに決めました。同級生たちが就職活動中に、1人だけバイトをして過ごすことには少し気が引けましたが、桃子さんは、縁を大切にしようと気持ちを固めたそうです。
翔太さんは、電力関連会社に入社し、現在の年収は700万円。3人で生活するには十分な年収でした。しかし、結婚生活が長くなるにつれ、桃子さんはある「息苦しさ」を感じるようになります。
「養われている」という無言の圧力
子どもと夫を中心とした毎日を送るなか、桃子さんはイライラした気持ちを翔太さんにぶつけることが増えました。翔太さんもまた、売り言葉に買い言葉という状況に。
桃子さんは、ふと「私は、本当に自分の足で立っているのだろうか?」という漠然とした不安に襲われることがあります。翔平さんは暴力を振るうわけでも、暴言を吐くわけでもありません。しかし、仕事で疲れて帰ってくると、不機嫌そうに黙り込む夫を前に、家計の主導権が夫にあると感じてしまい、意見をいいにくい、あるいは夫の顔色を窺ってしまう状況に陥りがちだったのです。
また、周囲に相談しにくいという悩みもあります。桃子さんの母親は自分が専業主婦だったこともあり、「家族のためにお勤めにいってくれているのだから、桃子が譲りなさい。我慢するものよ」といいます。また、同世代はみんな共働き。学生時代の友人も、幼稚園のママ友も、会えば「復職」や「仕事と育児の両立」の話ばかり。SNSを開けば「世帯年収〇〇万円」というパワーカップルの話題が飛び交っています。