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クロスボーダー収納代行に関する規制の導入
本改正を図示すると[図表6]の通りである。
(1) 改正の経緯・内容
2025年報告(p8)では、「近年、国内と国外との間での資金移動であって、収納代行の形式で行われるものが、海外オンラインカジノや海外出資金詐欺等の事案で用いられる事例が存在する」とし、金融安定理事会(FSB)の勧告でも、「詐欺や個人データの保護を含めた消費者保護上のリスク、サイバーの脅威等のオペレーションリスク、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与のリスク、送金遅延等のリスク」があるものについては適切な規制・監督を求めるべきとされている。
そこで、改正法2条の2第2号において、「国内から国外へ向けて資金を移動させ、又は国外から国内へ向けて資金を移動させる行為」は為替取引に該当するとした。ただし、「当該行為の態様その他の事情を勘案し、利用者の保護に欠けるおそれが少ないものとして内閣府令で定めるものを除く」とされている。ここで除外されるものとして2025報告(p9)は、金銭債権の発生原因の成立に関与する取引、すなわち、海外の物販プラットフォームで物品を購入するような場合等が挙げられている。他方、海外オンラインカジノや出資金詐欺等は除外されないとしている※22。
このように国内と国外との間で行われる収納代行が為替取引に該当するとなると、収納代行を行う業者は、たとえば電子決済手段・暗号資産サービス仲介業者の登録を受ける必要があることになる。電子決済手段・暗号資産サービス仲介業者に対しては、内閣総理大臣の権限に基づき、立入検査(改正法63条の22の18)、業務改善命令(改正法63条の22の19)および登録取消(改正法63条の22の20)などの処分を行うことができる。仮に、国内から行うことが違法である海外オンラインカジノの収納代行を行う業者が出てきたとしても、さまざまな監督手法を用いて、対処が可能になる。
※22 2025報告(p9~p10)ではエスクローサービスについても除外されるとしているが、省略する。
(2) 検討
上記で述べた通り、コンビニでの電気代支払いなどの収納代行は資金決済法の適用除外である(現行法・改正法2条の2)。すなわち、収納代行は債権者が債務者から代金を取り立てる行為の代行(=回収代行)であり、為替取引ではないと解されてきた。ただし、いわゆる割り勘アプリだけは、一般消費者が飲食代等を複数人から徴収するものであり、利用者保護の観点からも為替取引に該当するとして資金決済法の対象とされた経緯がある(現行法2条の2・改正法2条の2第1号)。
今回の改正法に関しては、送金業者が国内外をまたがる収納代行という構成をとることによって、日本法上の規制を回避し、上述のような違法カジノの掛け金や賞金の清算等に利用されているという実態があるとされる。したがって、このような違法な手段を原因とする金銭のやり取りを防止するとともに、個人データの保護やマネー・ローンダリングの防止等の観点から、為替取引に該当する(改正法2条の2第2号)と定めることは合理性が認められると考えられる。
![[図表6]クロスボーダー収納代行に関する規制の導入](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/d/0/540/img_d05cb92079bfab4871957d5494ec1dde150529.jpg)