「新卒採用した社員が、入社して間もないのに退職してしまった」「なかなか人材が定着しない」…そんなニュースを見聞きすることが増えました。サーチ・ビジネス(ヘッドハンティング)のパイオニアである東京エグゼクティブ・サーチ(TESCO)代表取締役社長の福留拓人氏は、退職自体は悪いことではないが、これから先のことを考えて意識すべきこともあると語ります。その内容を見ていきましょう。
ああ、入る会社を間違えた…新卒入社後すぐに“辞めたい”と思ったら?次のキャリアを左右する「会社への恩返し」の意識【転職のプロが助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

時代に求められる“スジの通ったキャリア観”

有名な話ですが、サイバーエージェント創業者の藤田晋(ふじたすすむ)氏が自身の著書に書いているエピソードがあります。藤田氏は最初に入社した会社で、1年目に前人未到の粗利益5,000万円という数字を作り上げた後、1年以内に会社を立ち上げると宣言して周囲を驚かせました。

 

入社した会社はスーパーエースの誕生で将来を嘱望したと思いますが、彼は周囲の引き留めを振り切り、わずか1年後に本当に起業し、今のサイバーエージェントという大きな組織を作り上げたのです。

 

藤田氏も最初に入社した会社の在職期間は短期でしたが、大きな数字とインパクトを残してその会社を卒業しました。私たちが参考にしたいのは、1年という時間の問題ではありません。また、誰もが藤田氏のようになろうとしているわけではないし、なれるわけでもありません。

 

要は、「お世話になった」、「自分に投資をしてくれた」、「ご縁があった」という関係に対しての恩返しの姿勢なのです。なんらかの実績を残して次に向かう、こういうスジの通った行動の積み重ねが、若い人たちのキャリア構築の第一歩になるのだと思います。

 

日本の新卒採用制度では、学生の段階で業界や職種を決めなければならず、その文化が若者にとって非常に厳しいものになっていることも否定できません。そのため、入社後に「思っていたのと違う」と感じる人がいても不思議ではありません。

 

キャリアのうえで重要な岐路を迎える瞬間はすぐにやってきます。仮にそこで失敗したとしても、「災い転じて福と為す」で、苦しい環境でもスジの通った実績があれば、その次の環境が高い評価をしてくれると思います。

 

焦って辞めるのではなく、「自分に投資してくれた人や組織に対して何ができるか」を考え、しっかりと貢献する意識を持つことで、次のキャリアがより良いものになるはずです。

 

 

福留 拓人
東京エグゼクティブ・サーチ株式会社
代表取締役社長