60歳で定年を迎え、仕事には一区切り――というのは昔の話。60歳以降も働き続けるというのが男女ともにスタンダードになっています。一方で社会は変わっても、夫婦関係は変わっていないようで、「目に見えない亀裂」」となっていることも。日々の何気ないやり取りが、思いがけず夫婦の関係を揺るがすこともあるようです。
もう限界です…「退職金2,500万円」60歳定年で戻ってきた単身赴任の夫、「今日のご飯なに?」の何気ないひと言から始まった「妻の異変」

定年後の「共働き生活」が抱える見えない負担

定年後も現役感が拭えない夫と、パートとはいえ仕事と家事を両立させている妻。もしかしたら、多くの家庭に共通する「老後の見えにくい不均衡」を象徴しているといえるかもしれません。

 

内閣府『令和6年版高齢社会白書』によると、60~64歳の男性の就業率は84.4%、女性が63.8%。男性が優位ではありますが、男女ともに60歳以降も働くのが一般的です。一方で「ふたりとも働いている」とはいっても、家事の担い手は依然として女性に偏っているのが実情。株式会社一条工務店が行った調査によると、「家でのご自身の家事分担の割合はどの程度ですか?」の問いに対して、女性の68.1%が7割以上の家事を担当と回答。一方で男性は「3~4割」という回答が最も多く39.8%でした。また、主に担当している家事として女性は「料理」がトップで88.7%。対して男性は「ゴミ出し」がトップで77.1%。上位5位までに「料理」はランクインしていません。料理を作るのは妻の役目――そのような家庭が圧倒的多数のようです。

 

そんな日々が終わりを迎えるまで、それほど時間はかかりませんでした。ある日、浩一さんがいつものように「今日のご飯なに?」と聞いたところ、恵子さんはひどい蕁麻疹と過呼吸で倒れてしまったのです。医師からは、原因はわからないものの「何か強いストレスを感じているのではないか」と指摘されました。そこで恵子さんから本音が語られたのです。

 

「もう限界、あなたと一緒の生活がつらい」

 

15年にもわたる単身赴任から帰ってきて、やっと夫婦水入らずでいられると意気揚々としていた浩一さんにとって、恵子さんが涙ながらにこぼしたひと言は、大きなショックでした。一方で、いつまでもお客様状態が抜けず、恵子さんの負担を考えてこなかった自分が情けないと大いに反省したといいます。

 

一時は、夫婦関係の崩壊も覚悟したという浩一さん。まずは恵子さんが「やってほしいことリスト」を紙に書き、浩一さんに相談。できそうなことから少しずつスタートさせ、恵子さんが少しでもストレスを感じないように努力しているといいます。

 

[参考資料]

内閣府『令和6年版高齢社会白書』

株式会社一条工務店『共働き夫婦の家事シェアに関する意識調査2024』