
世帯年収「2,000万円超」パワーカップルの決断
「この部屋から、東京タワーがみえます。この景色が気に入って買ったんですが、決断を早まってしまったかもしれない――浅はかでしたね」
都内の広告代理店に勤める杉本聡さん(仮名・39歳)。結婚したばかりで、お相手は別業界で活躍する女性です。ふたりの収入を合わせると、年収は2,000万円を超えます。ふたりが新居として購入したのは、東京都港区に建つ当時新築のタワーマンション25階。間取りは2LDKです。購入の決め手は、やはり窓から望む景色でした。
周辺にもタワーマンションはありましたが、タワマンならではの華美な設備は少なく、その分、比較的リーズナブルだったことも背中を押しました。それでも価格は約1億2,000万円。
「頭金を払ったうえで1億円を借りました。リーズナブルとはいえ、自分が億ションを買うとは……」
当初は7,000万円、8,000万円程度の新築マンションを考えていましたが、物件価格は軒並み高騰していました。郊外であれば予算内で購入できる物件はあるものの、杉本さん夫婦は将来的に子どもは考えない、いわゆる「DINKs(ディンクス)」。仕事を第一に考え、職場からのアクセスが物件選定の優先条件でした。そうなると億超えは覚悟しなければなりませんでした。
「清水の舞台から飛び降りるとは、まさにこのことなんだなと思いました」
30年ローンで、月々の返済額は約30万円。配偶者も高所得でなければ、とても購入に踏み切ることはできなかった物件です。それでも港区の駅チカ・タワマンでの生活は快適そのものだといいます。
「交通量の多い道路に近いのですが、縦方向に離れているので音はまったく気になりません。都心にある物件なだけに部屋は狭いですが、2人暮らしなのでそれほど気になりません」
都心の喧騒から一歩引いた場所での優雅な暮らし――。しかし、そんな生活は入居1ヵ月ほどで揺らぎはじめます。