(※写真はイメージです/PIXTA)
家選びに失敗した30代・40代の老後
30年前と現在では、住宅事情も大きく様変わりしています。住宅価格は年々上昇する一方、給与はそれほど増えていません。現在は金利上昇も大きな懸念事項となってきました。つまり、いまの30代・40代が家選びに失敗すれば、「住みにくい家+ローンだけが残る」という最悪のシナリオに陥る可能性もあるのです。
もちろん近年では、住宅の性能は格段に向上しており、適切に維持すれば80年近く住み続けられるとの研究結果もあります。しかし、建物の物理的な寿命とは別に、『その家で高齢期を快適に過ごせるかどうか』という視点が欠かせません。間取りや立地が老後に合っていなければ住み続けることが難しくなり、結果として短命な住宅になってしまうのです。
19坪・狭小住宅で迎える老後
八木さん夫妻が現在検討している建売住宅を購入すると、将来的にどのようなリスクが想定されるでしょうか。
・傾斜地にあるため、日常の買い物でさえ体力を使うようになる
・寝室は3階にあるが、トイレは1階のみという構造の不便さ
・2階のリビングが手狭なため、動線の悪さから転倒リスクが高まる
・万が一自宅内で倒れた場合、救急隊による搬出にも時間がかかる可能性がある
・建物そのものの耐久性にも疑問が残る
たとえ介護が必要な状態でも、住み慣れた自宅で家族と過ごしたいと望む人は多いはずです。しかし、身体の状態に対して住環境が対応できていなければ、自宅生活を諦めざるを得なくなり、施設入居という選択を迫られる可能性もあります。
たとえば、高齢期を見据えて自宅を手放し、サービス付き高齢者向け住宅やマンションに住み替えるという選択もあります。しかし、築年数が経過しているうえに老朽化が進んでいれば、その住宅は中古物件としての資産価値を維持するのが難しいかもしれません。場合によっては建物を解体し、更地として売るしかない状況になる可能性もあります。そうなると手元に残る資金は限定的となり、老後資金を十分に確保できないこともありえるのです。
今回検討している5,000万円の物件は、八木さん夫妻にとっては手が届きやすい価格帯に思えるかもしれません。しかし、長期的に見ればこの住宅は将来にわたって安心して暮らせる家とはいえず、むしろ老後の暮らしを脅かすリスクを抱えています。こうしたリスクをライフプランの専門家から告げられた八木さん夫妻は言葉を失いました。