持ち家の検討を本格的に始めるのは、30代から40代にかけての世代に多い傾向があります。なかでも、結婚して間もなく、子育てが始まったばかりという家庭が目立ちます。そうしたライフステージでは、家族の願いをふんだんに詰め込んだ理想の住まいを思い描くものです。日当たりのよい広々としたリビング、調理が快適にできるキッチン、家族それぞれの個室──そんな住空間に心を弾ませる人も多いでしょう。しかしながら、その家に高齢となった自分たちが暮らしている姿を、明確にイメージできている人はどれほどいるでしょうか?
世帯年収1,200万円の30代共働き夫婦、東京で予算内にマイホームを…「19坪・狭小住宅購入」決断の末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

将来を見越した家を選ぶポイント、6つ

購入時には「いまの不安」に目が向きがちで、将来の暮らしまで見据える余裕はなかなか持てません。とはいえ、老後の生活スタイルを視野に入れずに家を買うことはのちのち思わぬ落とし穴となる可能性があります。

 

住宅購入をめぐっては、ローンを完済できるかどうかだけが懸念材料ではありません。いま検討している住まいが、自分たちが人生の終盤を迎えるまで無事に機能し続けるものなのか。健康を損ね、身体が思うように動かなくなっても、そこに住み続けられる設計になっているのか――理想と現実のギャップに直面したとき、老後の暮らしが思いがけず苦しいものとなる可能性もあるのです。

 

八木さん夫妻の場合は、あえて予算を引き上げてでも、将来の暮らしに備えた住宅選びをすることが望ましいといえるでしょう。多少価格が高くなっても、それが安心して暮らせる終の住処になるのであれば、むしろ費用対効果は高いと考えられます。

 

将来を見越した家を選ぶには、以下のような視点が欠かせません。

 

1.建物の耐久性が高く、長期間使用できる構造であること
2.外壁や屋根などのメンテナンス費用が過度にかからないこと
3.建て替えを前提とせず、最初の一軒で老後まで住み切れること
4.1階に寝室を設け、家の中の移動が負担にならないよう配慮されていること
5.徒歩圏内にスーパーなどがあり、生活に必要な施設が揃っていること
6.人口減の時代にあっても、売却の見込みが立ちやすい好立地であること

 

こうした条件を備えた住まいは、単なる「家のスペック」ではなく、老後の生活の質そのものを支える重要な投資です。たしかに初期費用としての購入価格は高くなるかもしれませんが、定期的な修繕費や建て替えコストを抑えられるため、長期的に見れば生涯支出を抑えることも可能です。