高齢化が進む日本社会において、親の介護は避けて通れない現実となりつつあります。しかし、介護と経済的な負担は、多くの家庭にとって大きな課題です。もし年金受給額が少ない高齢者の介護を、働きながら担う家族が直面することになったら、どうすればいいのでしょうか。
うちの父、年金5万円しかないんです…在宅ワークで「月収25万円」58歳のひとり娘、認知症の83歳父と生きる厳しい現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

父が「認知症」と診断され、「年金5万円」の現実に直面

親が年をとったら、いずれ施設に入ってもらう——。そう考える家庭は少なくないかもしれません。しかし、実際にそのときが来ると、介護もお金も想像を超える壁が立ちはだかります。父・勇さん(仮名・83歳)と暮らす高田真由美さん(仮名・58歳)は、勇さんの年金が月5万円、真由美さんの月収が25万円という状況で、在宅で父の認知症介護を担っています。

 

3年ほど前から、勇さんに物忘れや同じ話を繰り返すといった症状が目立つようになりました。ある日、自宅の階段で転倒したことをきっかけに病院で検査を受けたところ、「軽度認知障害(MCI)」と診断されました。その後も症状が進行し、現在は「要介護2」の認定を受けています。

 

勇さんが認知症と診断されたあと、真由美さんは勤めていた会社を退職。現在は在宅ワークで月に25万円程度を得ています。月収は4割近く減少しましたが、仕事と介護を両立させるためには会社を辞めることが最善だと判断しました。

 

病気が明らかになった当初、父が受け取っている年金額をあらためて確認し、真由美さんは衝撃を受けました。父が受給していたのは、国民年金のみで月5万円程度。満額受給であれば、月額6万9108円(令和7年度)です。どうやら、保険料を納めていない期間があったよう。また、母はすでに他界しており、同じように年金は国民年金のみでした。そのため、勇さんが受給できる遺族年金もありません。高齢の親が「年金だけで暮らすことができる」と思い込んでいた真由美さんは、現実を前に言葉を失ったといいます。貯金は心許なく、すべては自分の収入にかかっている――責任が重くのしかかってきました。