60歳定年というケースが多いなか、定年後も働くかどうか、個々が判断しなければなりません。ひとつの判断基準が「定年後にお金の不安がないかどうか」。何があろうと「心配なし!」といえるのであれば、定年を機に仕事を辞めるという決断ができるでしょう。ただ人生はそう簡単ではないようです。
無謀でした…〈月収60万円〉〈退職金2,400万円予定〉の59歳サラリーマン、〈3,000万円〉を貯めて60歳定年退職を目論むも「やっぱり働かせてください」のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

60歳定年以降も仕事を続けるか、それとも仕事を辞めるか

都内の大手メーカーに勤める青木徹さん(仮名・59歳)。現在の月収は60万円ほど、退職金は2,400万円ほどが見込まれています。長年、節約と貯蓄に励み、夫婦が目標としていた3,000万円の貯蓄も目前だといいます。青木さんの勤める会社では60歳が定年。以降は再雇用で契約社員となり、最長70歳までは働くことができます。これまで先輩社員の半数以上が再雇用を選んでいました。

 

【企業における定年制の状況】

・定年制の廃止…3.9%

・60歳定年…64.4%

・61~64歳定年…2.9%

・65歳定年…25.2%

・66~69歳定年…1.1%

・70歳以上定年…2.4%

出所:厚生労働省『令和6年 高年齢者雇用状況等報告』

 

――年金をもらうまでの繋ぎとして

――まだ住宅ローンが残っているから

――子どもが大学を卒業するまでは

――仕事以外にすることがない

 

再雇用を決めた理由は人それぞれですが、青木さんの場合、十分な退職金ももらえて、十分な預貯金もある。ローンは完済しているし、子どもは全員社会人。映画鑑賞が趣味で、仕事を辞めたら映画三昧の日々を送り、ロケ地巡りもしたいと思っていました。

 

もし定年で仕事を辞めたらどうなのか。4歳下の妻・紀子さんとともに家計を見直してみると、1ヵ月の支出は平均20万円ほど。年間240万円以下であることがわかりました。毎年の固定資産税など、別途考えなければならない費用のほか、趣味に没頭するならそのぶんの費用も考えなければなりません。しかし共働きの青木さん夫婦。徹さんが定年で仕事をやめても、4年間は紀子さんの収入があり生活費を賄える予定。実質、無収入になるかもしれないのは1年間だけです。紀子さんからも「仕事を辞めてゆっくりしてもいいのでは。その間、家事は全部よろしく」と後押し。徹さんは60歳での定年退職を心に決め、残りの会社員生活をカウントダウンするように過ごすようになったといいます。