(写真はイメージです/PIXTA)
心停止による救急搬送…25階以上は生存率ゼロ%の衝撃
モデルルームを訪れると、まだ建設途中ではあるものの、優雅な生活が叶うことは直感的にわかったといいます。
――はっきりいって、ひと目惚れでした
それまで住んでいた戸建てを売り、足りない分は貯蓄を取り崩して、6,000万円程度の費用を捻出しました。老後のための貯蓄を取り崩すことに抵抗がなかったわけではありませんでしたが、年金は夫婦で月32万円、手取りにすると26万円。特に節約を心がけているわけではありませんが、余裕をもって生活できる金額です。多少貯蓄を取り崩しても大丈夫、という結論に至ったのでした。
こうして始まったタワマンでのセカンドライフ。前出の通り、周囲には目立った高い建物がないため、大きめに取られた窓からは、圧倒的な景色を望みます。
――本当にいい選択をした
そう考えていましたが、入居から10年ほど経ったある日、「タワマンになんて住むんじゃなかった」と後悔する出来事が起きたといいます。ある日のこと、博さんが体調を崩し、救急搬送されるという事態に見舞われました。救急隊員が到着してから、高層階の自宅までたどり着くまでに時間を要し、由美子さんは不安な時間を過ごしたそうです。もしこれが命の危険にさらされているときだったら……このとき以来、安心しきった老後は、「万一の際には手遅れ」という危険と隣り合わせに感じるようになったといいます。
2016年、カナダ医師会誌『CMAJ』での発表と、古いものになりますが、心停止で病院に運ばれた際の生存率は、1~2階では4.2%だったのに対し、16階以上で0.9%、25階以上ではゼロだったといいます。タワマン高層階には、思わぬリスクを内包しています。
タワマン生活に後悔の念が芽生えた石川さん夫婦。今、住み替えを考えている同世代には、やはりタワーマンションは勧めない?
――いえ、タワーマンションに限らずですが、この年になると駅前の好立地というのはありがたい。買い物も隣のスーパーに行けばいいですし、その往復でいい運動にもなります。何かと物騒ですから、防犯性の高いタワーマンションであれば、高齢者も安心です。おすすめは、高齢になっても階段でのぼれる階数、2階とか、3階とか。階段を使えば、健康維持にもいいですよね
老後の生活設計において、快適性や利便性ばかりを重視し、長期的な視点や変化への対応力を欠いていたことを痛感しているという石川さん夫婦。高齢になるにつれて、生活スタイルや価値観が変化することを十分に考慮していませんでした。
――もし、このマンションで2階や3階に空きが出たら、住み替えを検討したいですね
[参考資料]