今回は、「中国製造2025」の計画の中で、中国の各地域がどのような戦略を立てているのかを見ていきます。 ※本連載は2015年に中国国務院が発表した製造業の今後10年間の戦略計画「中国製造2025」に関して、その概要を紹介するとともに、計画成否の鍵を握る要因について探っていきます。

浙江省の寧波がモデル都市第1号に指定

中国各紙は、本年8月までに、31省市区のうち26、またハルビン、南京、蘇州、東莞など30以上の都市が各々の行動綱要、実施意見等を発表したと報道している。また、30の都市が「中国製造2025」(以下、計画)に基づくモデル都市の申請を行う中、浙江省の寧波がモデル都市第1号に指定された。浙江の省行動綱要が発表されてから230余日あまり経っての指定で、同省の計画実施の要になると期待されている。寧波は近年、産業構造の転換・高度化が著しく、すでに長江三角デルタの南翼の中心、全国の中でも先進的な製造基地として認知されている都市だ。

 

地域毎の計画を比較すると、東部(上海、広東、江蘇、浙江、河北、遼寧、福建、北京、天津、山東)がハイテク装備製造、中部(安徽、山西、吉林、江西、河南、湖北、湖南)が産業高度化、西部(四川、甘粛、陝西、広西、寧夏、新彊、雲南、青海、重慶)が現状優位性を持つ産業を突破口にするという、それぞれの発展段階に応じた異なる考え方(発展思路)が示されており、伝統的な東中西部の「老三極」から「新三極」局面の形成が加速すると見られている(2016年8月18日付経済参考報)。

東部・中部・西部それぞれで表れる特色

具体的には、東部は基本的に計画の10大重点領域を対象として、ハイエンド装備製造や戦略新興産業などを重点的に発展させるとしている。例えば、江蘇はネット通信、人口知能、先端交通システム、航空など15産業を重点に、今後10年間で国内最先端かつ世界の先進的水準にまで引き上げるとしている。浙江は2020年までにハイエンド装備製造の生産額1兆元以上、生産シェア40%以上を目標とし、また、産業用ロボット活用のモデル地区形成、大数据処理の推進などをうたっている。特にロボット活用を積極的に推進する「555機器換人」、すなわち、今後5年間、毎年ロボットを人に換える5000プロジェクトを実施、そのための投資5000億元投入という計画を掲げている。

 

中部は資源採掘や農業機械製造など現状優位性を持つ産業に加え、新エネルギー、新素材、バイオ医薬品などの開発を進めるとし、また各省とも産業構造高度化を図ること、そのためにハイテク技術製造業のウェイトを高め、資源浪費・汚染物質排出産業を淘汰していくとしている。例えば、山西はグリーン発展を掲げ、環境データセンターや環境保護基地建設、省資源・環境影響評価システムの強化と、それを反映した人事評価システムの構築を掲げている。

 

西部は現在優位性を持つ産業を突破口にする発展戦略を提示している。例えば、陝西は現状情報技術や航空産業に優位性を持つため、集積回路、智能終端(インテリジェントターミナル)、雲計算(クラウドコンピューティング)、大数据、航空などを重点、四川や重慶は交通軌道システム、新エネルギー自動車、装備製造などの領域を引き続き発展させるとしている。西部はその地理的特性から、発展戦略を「一帯一路」、すなわち新シルクロード構想に関連付けているところが多い。重慶、四川、広西、雲南はアセアンとの連携を強化し、装備製造、軽工業、食品工業などの海外展開を促進すること、また陝西、甘粛、青海はシルクロード沿線国家、さらには日韓との協力強化を強調している。

 

他方、目標実現のための具体的なプロジェクト、投資額まで明らかにしている地域は、陝西が14重点領域の100プロジェクト、投資総額8042億元、甘粛が2016〜18年実施予定の600以上の重点プロジェクトに2600億元以上などが明らかにされている他、モデル都市第1号に指定された寧波が、指定に合わせ、マイクロチップ製造関係(100億元以上)を含む30の投資プロジェクト、投資総額765億元を発表しているが、地域毎の詳細はなお、あまり伝えられていない。

 

 

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