「低コスト」から「高品質・低環境負荷」へ
「中国製造2025」(以下、計画)の基本的考え方を中国MBA智庫百科に依拠してまとめると、「4つの転換」、「1つの主線」、「8つの戦略項目」に集約される。
すなわち、「4つの転換」は、(1)生産要素主導から創新主導へ、(2)低コスト競争から質の競争へ、(3)資源浪費・汚染物質排出製造からグリーン型製造へ、(4)生産型製造からサービス型製造へ、「1つの主線」は、情報技術と製造技術の融合を通じてデジタル化等による製造を目指すこと、「8つの戦略項目」は、(1)製造デジタル化、(2)製品設計能力向上、(3)創新体系改善、(4)製造業基盤強化、(5)品質向上、(6)グリーン型製造推進、(7)国際競争力を持つ企業群・優位産業の育成、(8)現代的な製造サービス業発展だ。
計画には、2020〜25年の研究開発費や生産工程デジタル化率などの数値目標(図表1)、2020年までに約15、2025年までに約40の創新センターを設置すること、製造基盤強化のため、コア部品の国内調達比率を2020年までに40%、2025年までに70%に高める目標が掲げられている。さらに長期目標として「三歩走」、すなわち2025年までに世界の製造強国の仲間入りをし、2035年までに世界平均の製造強国になること、新中国成立100年(2049年)に向け、製造強国トップの位置を確保することが掲げられている。
「主線」から明らかなように、インターネット(互聯網)での創新を製造業にいかに繋げていくかが鍵となっており、2016年両会(全人代と政治協商会議)でも、「中国製造2025+互聯網=?」が重要問題意識として提起された(2016年4月21日付新華網)。その意味で、計画発表直後の2015年7月、国務院が発表した行政指導意見「互聯網+」と、内容的に不可分の関係にあり、実際、「互聯網+」ではその「重点行動」の1つとして、製造業との協調が明記されている。
図表1 2020年、25年の製造業主要指標目標
ビッグデータや省エネ自動車など10大重点領域を指定
胡錦濤・温家宝前政権の2010年、7大戦略新興産業(省エネ・環境保護、新興情報産業、バイオ、新エネルギー、新エネルギー自動車、ハイエンド装備製造・新素材)の概念が導入されたが、計画では10大重点領域として、情報技術、高速大数据(ビッグデータ)処理機器・ロボット、航空、海洋・船舶、先端交通システム、省エネ自動車、電力、農業機械、新素材、バイオ・高性能医療機器に再分類、指定されている。
国務院は2015年6月、計画推進のための政策企画立案、各部門・地域の指導調整を行うことを目的として、国家製造強国建設領導小組(馬凱副首相を組長、工信部長、国務院副秘書長、発展改革委副主任、科学技術部、財政部の各副部長を副組長)を設置、事務局を工信部(事務トップは工信部副部長)とする体制を整えた。領導小組は指導小規模グループで、党や国務院の下に政策アドバイスや調整を行うことを目的に、従来から課題に応じていくつか設立されているが、その運営実態は必ずしも明らかでない。
図表2