2015年5月、中国国務院(内閣に相当)は製造業の今後10年間の戦略計画「中国製造2025」を発表しました。これに基づき、2016年8月時点で、31省市区のうち26の地方政府が実施政策を公表しています。本連載では、この戦略計画の概要を紹介するとともに、計画成否の鍵を握る要因について探っていきます。

中国のハイテク技術は対外依存度が50%以上

「中国製造2025」(以下、計画)を事務的に主導してきた工業情報化部(中国語呼称は工業信息化部のため、その略称は工信部)によると、中国は歴史上世界1の製造大国だったが、1850年頃にその地位を失った後、2010年に復活した。現在、中国の製造業生産の世界シェアは約20%(なかでも空調機器80%、携帯電話機器70%、靴60%)、200種類以上の工業品の生産と輸出が世界1で、うち数十種類は中国の輸出が世界の7割以上を占める(2015年5月20日付第一財経)。

 

しかし、一貫して進出外国企業の設備や人員に依存しており、中国自身、自らのイノベーション(創新)能力に欠け、基礎的な部品・技術の基盤が著しく弱いことを認識してきた。例えば、ハイエンドデジタル制御システムの95%、マイクロチップの80%、また、ほぼ100%のハイエンドのハイドロ―リックシール・エンジンは輸入に依存、全体として中国のハイテク技術の対外依存度は50%以上(先進国は概ね30%未満、日米は5%未満)と認識されている(江蘇省工業情報化協会、2016年10月11日付専欄)。

「人口ボーナス」時期はすでに終了?

これまで中国には安価な労働力が無尽蔵にあると思われ、それを求めて、日本も含め多くの外国企業が中国に進出、広東省を中心に「世界の工場」と呼ばれ、それを原動力に、10%を超える高成長を達成してきた。しかしここへ来て、中国内では高齢化が加速(2011〜15年、15〜59歳人口シェアは69.8%から66.3%へ低下する一方、60歳以上人口は13.7%から16.1%へ上昇、中国国家統計局)、2012年に生産労働人口絶対数が減少に転じている。中国を代表するシンクタンク、社会科学院は2013年、中国は2010年にすでに「人口紅利(ボーナス)」時期を終了したとの見解を示している(「推进改革,提高潜在增长率」蔡昉,陆旸、财新网‘比较’2013年第1期)。

 

これを受け、賃金が他のアジア諸国と比べ割高になるなど(一般職工月額賃金で比較すると、深圳424ドルに対し、アジア他地域は概ね150〜350ドル、2015年ジェトロ調査)、中国労働市場の諸条件は大きく変化している。他方、世界的には、情報技術を中心に新たな科学技術革命と呼ばれる局面が到来している。計画は直接的には、2013年ドイツが発表した「インダストリー4.0」に触発されたものと見られており、それはその通りであろうが、背後にはこうした内外の環境変化という必然性があることを忘れてはならない。

 

 

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