婚姻期間が20年以上の熟年離婚が増えています。そんなまさかの出来事に直面するのは、サラリーマンの勝ち組であろうと、負け組であろうと関係ありません。悠々自適な老後のはずが一気に転落。どこまで落ちていくのかは、人それぞれのようです。
〈退職金4,200万円・年金月23万円〉65歳・元役員男性、勝ち組人生が一転、まさかの放浪生活へ。さらに転落が続き、悲鳴。きっかけは「年金機構からの通知」

妻から三行半。ひとり身なった元会社役員、賃貸オーナーからもNO

大手企業で役員を務めていた内田誠さん(仮名・65歳)。65歳を機に完全引退を決意しました。手にした退職金は4,200万円。完全引退とともに手にする年金は月23万円。貯金や株式、投信などを合わせると、8,000万円程度の蓄えがあります。まさにサラリーマンのなかの勝ち組。ピラミッドの頂上に君臨する存在といえるでしょう。

 

ただ「ここが人生のピークだった」と内田さん。思いもしなかったことに遭遇します。

 

――妻から離婚届を突きつけられました。「私の務めはこれで終わり。これからは自由に生きていきたいです」と

 

厚生労働省『令和4年度 離婚に関する統計の概況』によると、熟年離婚とされる同居期間20年以上の割合は、統計開始以来上昇傾向。2021年には21.5%と、離婚する夫婦の5組に1組は熟年離婚となっています。

 

こんな話が出てくるなんて1ミリも想像していなかったという内田さん。思い返せば、結婚して以来、家庭よりも仕事を優先してきました。そのぶん、子どもの教育含めて、家のことはすべて妻におまかせ。だからこそ、内田さんは仕事に打ちこむことができ、役員にまで上りつめることができたと思っていました。

 

だからこそ、これからは夫婦水入らず、ゆったりと過ごしていく。そんな老後を思い描いていたのに、一転、ひとり身に。さらに妻は完璧な財産分与を求めてきました。貯金のほか、株式や投資信託などの金融資産、退職金……さらにこれまで住んでいた自宅までも。売却し、現金化するしかなく、内田さんは住むところを失いました。

 

仕方がない、賃貸マンションでも借りるしか……しかし、簡単にはいきません。

 

――年金を受け取っている高齢者の方には、うちでは貸せません

 

そう断られたのです。資産が半分程度になるとはいえ、お金は十分にあります。「金ならいくらでもあるぞ」といっても、「そういう問題ではないんですよ」と軽くあしらわれたといいます。

 

株式会社R65による『高齢者向け賃貸に関する実態調査』によると、「高齢者の入居を受け入れていないという賃貸オーナー」は約4割。また同社による『高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2023年)』によると、65歳を超えて賃貸住宅の部屋探し経験がある人の26.8%が「年齢を理由とした賃貸住宅への入居拒否」を経験したといいます。しかも収入による差はなく、総じて高齢者は家が借りにくいという状況にあります。