
大手企業を退職し、地方移住を決意
さかのぼること10年ほど前、東京都内の大手企業に勤めていた三浦学さん(仮名・当時38歳)は、妻・久美子さん(仮名・当時39歳)とふたりの子どもと暮らしていました。月収は約50万円と安定しており、都市部での生活に大きな不満はありません。しかし、子どもが成長するにつれて「もっと自然豊かな環境でのびのびと育てたい」という思いが強くなりました。
東京に実家があり、都心にある私立中学に進学した学さん。中学生から満員電車に揺られる生活を経験したから、というのが自己分析です。ただ、地方移住に憧れながらも、見知らぬ土地への抵抗がありました。そこで考えたのが久美子さんの地元、北海道へのIターン(久美子さんにとってはUターン)。三浦さん夫婦は共働きで、仕事と子育ての両立が課題でした。義実家の近くであれば、サポートを得やすいのではないかという打算もありました。
そのような思いを打ち明けたところ、久美子さんは大賛成。とんとん拍子で話は進んでいきました。
地方移住を希望する子育て世帯は増加傾向にあります。2023年、コロナ禍の調査ではありますが、内閣府『新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査(第6回)』によると、地方移住への関心は全体で35.1%*。東京23区では35.7%となりました。
*地方移住に強い関心がある、関心がある、やや関心があるの合計
理由としては、「人口密度が低く自然豊かな環境に魅力を感じたため」が33.1%と最も多くなっています。一方で懸念として最も多く挙がったのが「仕事や収入」で51.1%。47都道府県で比較した際、東京都の平均給与は突出しています(関連記事:『47都道府県「会社員の平均給与」最新ランキング!1位と47位の酷すぎる格差。「実感なき賃上げの実情」が明らかに』)。東京からの地方移住となると、収入ダウンは覚悟しなければなりません。北海道に移住するにあたり、学さんは地元企業へ転職、久美子さんは会社員を辞め、在宅ワークを始めることに。学さんの年収は800万円から500万円へと減少し、久美子さんの収入は以前よりも不安定になりました。しかし生活費は都市部よりも抑えられ、自然に囲まれた暮らしに満足しています。