
72歳女性、30代のとき「ひとりで生きていけるように」と始めたのは…
東京都内のマンションで一人暮らしをする原田悦子さん(仮名・72歳)。受け取る年金は、基礎年金と会社員時代の厚生年金を合わせても月10万円ほど。物価高の影響もあり、年金だけで生活するのは容易ではありません。しかし、原田さんは「年金だけでは暮らせるわけがないですよ」と笑います。
【70代の金融商品平均保有額】
■金融資産保有額…平均2,104万円、中央値1,100万円
(商品別)
・預貯金(運用または将来の備え)…676万円
・金銭信託…9万円
・生命保険…181万円
・損害保険…23万円
・個人年金保険…50万円
・債券…97万円
・株式…311万円
・投資信託…166万円
・財形貯蓄…2万円
・その他金融商品…14万円
出所:金融広報中央委員会『令和5年家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]』
※数値は金融資産保有世帯に限る
日々の生活は節約を心がけた質素なものですが、原田さんは年に2回、海外旅行に出かけます。しかも、高級ホテルに宿泊し、高級レストランで食事を楽しむという贅沢な旅です。
「今年の冬はバリに行ってきました。円安だったので大変でしたが、できる範囲で贅沢をしてきました」と原田さんは語ります。
経済的な不安がなく、自由な老後を謳歌できる理由は、若いころからの賢い資産形成にありました。原田さんが20代を過ごしたのは、女性が家庭に入るのが一般的だった1970年代。当時は、「適齢期を過ぎた女性は婚期を逃す」という考え方も根強く残っていました。しかし、原田さんは大学卒業後に出版社に就職し、編集者としてキャリアを積む中で「もっと仕事を極めたい」と思うようになったといいます。
周囲の友人が次々と結婚していく中で、原田さんは「結婚よりも仕事」と仕事に打ち込みました。「女性が働き続けるのは、今よりもずっと大変でした。上司に『そろそろ寿退社するのか?』なんていわれることもありましたね。でも、私は仕事が好きだったし、経済的にも自立して生きたかったんです」と原田さんは当時を振り返ります。
30代で独立し、フリーランスの編集者として活動を始めた原田さん。当時、女性がフリーランスで生計を立てることはまだ珍しく、収入も安定しているとはいい難い状況でした。「一人でも生きていけるように、お金を増やす必要がある」と考えた原田さんは、株式投資を始めたのです。