高齢化が進み、多死社会とも呼ばれる昨今。亡くなった親の資産の承継は重要な課題となっています。特に、生前贈与は相続税対策としても有効な手段ですが、税金の問題は複雑です。実施前に確認しておかなければ損をするケースも少なくありません。本記事ではAさん夫婦の事例とともに、生前贈与の基礎知識から、高額な贈与税を回避するための制度、そして祖父母から孫への相続における注意点について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
絶縁中。嫁は憎いが、大学2年生の孫から懇願され…逆さ仏で愛する次男に先立たれた70代夫婦が「2,000万円」を生前贈与後、号泣したワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

2,000万円の贈与税はいくらかかる?

贈与税の計算には年間110万円の基礎控除があります。この金額を超えると贈与税が課税されます。また特例贈与と一般贈与にわかれ、それぞれ税率や控除額が変わります。

 

●特例贈与:直系尊属(祖父母や父母など)から18歳以上の子・孫などへの贈与

●一般贈与:特例贈与以外の贈与

 

2,000万円の贈与税は、特例贈与では585万5,000円、一般贈与では695万円となります。Aさんの孫は大学2年生ですから、特例贈与に該当します。

 

「2,000万円渡しても600万円も税金で取られるんじゃさすがに可哀そうだなあ」Aさんはどうしたものかと頭を抱えます。

まとまった贈与で特例を利用、非課税に

生前贈与でまとまった資産を贈与する場合、2,500万円まで贈与税を非課税にできる「相続時精算課税制度」という制度があります。この制度は、贈与をした人(Aさん)が亡くなったときに、生前贈与した財産と相続時の財産を合算して相続税として計算し、まとめて支払う制度です。相続が発生したときに精算するので「相続時精算課税制度」という制度名です。

 

この制度を利用すると、若い世代に早い段階でまとまった資産を譲り渡すことができます。なお、贈与額が2,500万円を超えた場合は、超えた部分に対して一律20%の贈与税がかかります。

 

相続時精算課税制度を利用する場合は、「相続時精算課税制度選択届出書」を税務署に提出しなくてはなりませんのでご注意ください。また、相続時精算課税制度を利用した贈与は税務署への贈与税の申告義務があります。「相続時精算課税制度選択届出書」の用紙を税務署でもらうときに、アドバイスをしてもらうといいでしょう。贈与税の申告をしなかった場合は相続時精算課税制度が適用されず、通常の贈与税が課税されることになりますので注意してください。

 

なお、令和5年度税制改正により、相続時精算課税制度に年間110万円までの基礎控除が創設されました。令和6年1月1日以降の贈与から適用されていますので、相続時精算課税制度を利用して110万円以下の贈与を受けた場合は贈与税の申告は不要になります。

 

また、相続時精算課税制度を利用して土地を贈与した場合、「小規模宅地等の特例」を適用することができなくなってしまいます。「小規模宅地等の特例」とは、一定の要件を満たすと土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度です。ただし、生前に贈与した土地には認められませんのでご注意ください。