学校を卒業以来、会社のために頑張ってきたサラリーマン。その多くは60歳を機に定年を迎えます。ライフステージの大きな転換点。さらに夫婦としても大きな決断に迫られる……そんなケースも珍しくはありません。
〈退職金4,000万円〉大企業元部長の60歳夫、58歳妻からの唐突な離婚話に「お前1人で何ができるんだ!」と虚勢。自慢の邸宅で今日もコンビニ弁当を食らう孤独な日々

定年を前に離婚を突きつけらえ…30年超の結婚生活が終焉

結婚20年以上の夫婦の離婚は熟年離婚と呼ばれていますが、離婚に占める割合は年々増加傾向。厚生労働省『人口動態』によると、1990年に15%未満だった熟年離婚は、2024年には予想値36%。離婚する夫婦の3組に1組は熟年離婚という水準です。

 

2歳年下の妻から離婚話を突きつけられたのは、ある日の夕食のこと。藤原さんは定年後の生活について話題に出しました。「定年後も頼む」と伝えていると、「それは無理。離婚してください」と切り出されたといいます。

 

妻を養い、家族を守ってきた良き夫と自覚していた藤原さんにとって、妻のいっていることがまったく理解できず「そんなバカな話があるか」と、わかりやすく狼狽。やっとのことで「お前1人で何ができるんだ!」と言い放ち、話は打ち切り。その日はさっさと寝てしまったといいます。しかし、次の日の朝、ダイニングテーブルには離婚届と弁護士事務所の名刺、そして「今後については、弁護士を通してください」というメッセージ。妻の姿は家にはありません。

 

慌てて妻の携帯電話に連絡したものの、すでに解約されて連絡は付かず。娘たちに連絡すると「お父さんとお母さんのことで、私には関係ないこと」と突き返される始末。ここで離婚に向けて、用意周到に準備されていたことを知ったといいます。

 

離婚に向けての協議のなかで、藤原さんのモラハラが離婚原因であることがわかりました。専業主婦だった妻。振り返ると、確かにきつくあたることはありました。

 

――専業主婦なんて誰でもできるだろ

――こんな家に住めるのは誰のおかげだ

――自分で稼いでから文句をいえよ

――掃除が甘いんだよ、これで家事してるつもり

――子育てくらい当たり前のことだろ

――ただの主婦が偉そうにするな

 

こんなことをいっただろうか……正直、思い当たらないことばかりでしたが、15年以上も書き留めていたという日記には、藤原さんがいった数々のモラハラ発言が綴られていました。妻は20年近くも前に離婚を決意。そして20年もの間、ただ離婚に向けて進めてきたことが明らかになり、ただ唖然とするしかなかったといいます。

 

――よき夫、よき父だと思っていましたが……30年以上一緒にいても気づかないものなんですね

 

それまで当たり前のようにいた家族がいなくなり、広い邸宅にひとり残された藤原さん。コンビニで買ってきたお弁当をひとり寂しく食べるたびに、30年の結婚生活が無意味だったことを痛感。そして孤独に襲われ、「こんなはずじゃなかったのに……」と悔やむ気持ちでいっぱいになるといいます。

 

【熟年離婚した男女に聞いた「熟年離婚して感じたデメリット」は?】

・デメリットはない…男性:27.2%、女性:43.2%

・家事が大変になった…男性:30.0%、女性:4.1%

・孤独を感じるようになった…男性:27.7%、女性:5.0%

・金銭面で不安が出てきた…男性:3.1%、女性:24.4%

・現在の家に住めなくなった…男性:5.6%、女性:10.3%

・働く必要が出た…男性:1.6%、女性:9.3%

※出所:ツナグ離婚弁護士(株式会社Clamppy)

 

【参考資料】

厚生労働省『人口動態』

ツナグ離婚弁護士(株式会社Clamppy)『熟年離婚(20年以上の婚姻期間を経ての離婚)に関するアンケート』