(※写真はイメージです/PIXTA)
65歳元教員、突如始めた資産運用で「まさかの大胆行動」
田中さんがまず参加したのは、シニアサークル。同世代の交流を深めるもので、まずはシングル限定のランチ会に参加してみたといいます。
――おしゃれな会席が楽しめるお店でした。婚活とともに交流の幅を広げたいという同年代が参加していました。みなさんバックグラウンドが異なるので話はどれも興味深いものでした
特に興味深かったのが、老後の生活設計、それに伴うお金の話。「職業柄、勉強の話はいろいろとしてきましたが、お金の勉強の話はしたことがなかった」という田中さん。そのため金融業界出身という人の話はとても参考になったといいます。
田中さん、イベント後に即、口座開設。65歳にして、初めて投資にチャレンジしようと考えたといいます。
――これまで貯めてきたお金もあるし、さらに2,200万円ほどの退職金もそのまま貯金しています。年金も月20万円ほどあるし、お金に困らないと考えていました。ただみなさん、長寿に備えてしっかりと運用されている。私もまずは真似てみようと考えました
資産運用を行う同年代に触発された田中さん。ここで大胆行動にでます。証券会社の窓口で説明を聞いたあと、気になる株式や投資信託を選び、退職金の全額をつぎ込んだのです。
そのことを話すと周囲は「真面目で安定志向の田中さんが!?」と驚かれたといいます。一方で田中さんは、これまでにない大胆な行動をとる自分に、ちょっと酔っていた部分があったとか。
――これまで想定通りの人生だったので、そこからはみ出していることに、快感みたいなものも覚えて。証券会社の人が勧めてくれたというのもありますし
世の中にはビギナーズラッグもありますが、そんなに甘いものではありません。購入したすべてで損失が出たわけではありませんが収支は大きくマイナス。投資信託は手数料が高く思ったほど儲からなかったといいます。さらに損失を取り戻そうと、信用取引にも手を出してしまい、退職金はあっという間に半分になってしまいました。その間、わずか4ヵ月……。
――何かの間違いではと何度見直したところで、退職金は半分しかない……人生、終わったと思いました
食事会で知り合った人からのアドバイスもあり、これ以上損失を拡大させないよう、田中さんは投資の世界から早々に引退を決めたといいます。
田中さんは、参加したイベントがきっかけで退職金の運用を考えましたが、そもそも退職金が振り込まれると、金融機関から提案を受けることがよくあります。このとき、投資経験のない人ほど、大胆な行動を取りがちなのも、よくある話です。しっかりと投資リスクを理解し、自身がどれほど許容できるか把握することが第一歩。投資商品の簡単な仕組みや、運用コストなど、しっかりと抑えつつ、分散投資を意識して進めていきたいものです。
[参考資料]