
少子化を加速させる要因は?
少子化の3つ目の原因としては、育児に対する経済的負担が大きいことが挙げられる。特に、子どもの教育費が子育ての負担になっている。文部科学省の「平成30年度学校基本統計(学校基本調査報告書)」によると、小学校から大学まで、1人にかかる教育費は、幼稚園から大学まですべて公立校に通った場合は約800万円、すべて私立校なら約2,300万円もかかる(文部科学省「結果の概要-令和3年度子供の学習費調査」、「令和3年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」から計算)。
内閣府が2021年に発表した「少子化社会に関する国際意識調査」(調査期間:2020年10月~2021年1月、調査対象:子どもがいる20~49歳の男女))によると、2020年時点で子育てにかかる経済的負担として大きなもの(複数回答)は、「学習塾など学校以外の教育費」(59.2%)、「学習塾以外の習い事費用」(42.8%)、「保育にかかる費用」(39.0%)が上位3位を占めた。特に、「学習塾など学校以外の教育費」と「学習塾以外の習い事費用」と回答した割合は2010年の調査と比べてそれぞれ22.7ポイントと22.9ポイントも増加した。
少子化の4つ目の原因としては、依然として男女別賃金格差が存在していることが挙げられる。2021年の男性の賃金水準は女性と比べて22.1%高く、2021年の男性の賃金水準は女性と比べて31.1%高く、OECD平均12.0%を大きく上回っている([図表5])。
統計的差別や賃金格差がなくなり、女性が男性と同等に労働市場に参加することになると女性は男性に経済的に頼らなくなり、性別役割分担意識もなくなる。統計的差別とは、差別を行う意図がなくても、過去の統計データに基づいた合理的判断から結果的に生じる差別をいう。
つまり、まだ一部の企業は、「〇割の女性が出産を機に仕事を辞める」、「女性の〇割は専業主婦になることを望んでいる」といった統計データに基づいて採用を行っており、その結果統計的差別が発生している。そして、子育てに対する経済的負担が減り一人でも子育てができるという自信ができ、出産を肯定的に考えることになるだろう。
少子化の5つ目の原因としては、育児や家事に対する女性の負担が大きい点が挙げられる。OECDが2020年にまとめた生活時間の国際比較データ(15~64歳の男女を対象)1によると、男性の1日あたりの有償労働時間(市場で労働力を提供して対価を得る時間)は日本が452分で最もながいことに比べて、無償労働時間(家事、育児、介護、育児、買い物、ボランティア活動など対価を要求しない労働時間)は41分で最も低いことが明らかになった。日本の男性の家事・育児時間は、主要先進国と比較するとまだ少なく、女性に家事や育児への負担が偏っていることがうかがえる。
さらに、日本では男性の育児休業取得率も低い。厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、2021年における民間企業に勤める日本の男性の育児休業取得率は13.97%で過去最高を更新したものの、女性の85.1%とはまだ大きな差を見せている。
1 OECD(2020)「Balancing paid work, unpaid work and leisure」