2022年の日本の出生率は1.26となり、過去最低を記録した2005年に並ぶ水準となった。日本の少子化はなぜ止まらないのだろうか。そこで本稿では、少子化の原因と、少子化対策における「財源」を確保する方法について、ニッセイ基礎研究所の金明中氏が詳しく解説する。
日本の少子化の原因と最近の財源に関する議論について (写真はイメージです/PIXTA)

解決すべきは「育児休業中の所得確保」…そのワケ

日本政府は男性の育児休業取得率を2025年までに30%に引き上げるという目標を掲げており、それを達成するために、2021年6月、男性の育児休業取得促進を含む育児・介護休業法等改正法案を衆議院本会議において全会一致で可決・成立させた。その結果、2022年10月には「出生時育児休業(産後パパ育休)」が新たに創設されることになった。

 

「出生時育児休業(産後パパ育休)」とは、男性労働者が子どもの出生後8週間以内に4週間までの休業を取得できる制度であり、原則として休業2週間前までの申し出により休暇取得が可能になった(既存の育休制度では原則1ヵ月前までの申し出が必要)。

 

また、育児休業4週間を分割して2回取得することと、労使協定を締結している場合に限り、労働者と事業主で事前に調整して合意した範囲内で就業することもできるようになった。既存の制度では原則禁止とされていた育休中の就業が認められることになったのは当制度の大きな特徴だと言える。

 

一方、育児休業期間中に支給される育児休業給付は、育児休業開始から最初の6カ月間は休業前賃金の67%を上限(育児休業の開始から6カ月経過後は50%)としている。専門家の間では育児休業給付の引き上げを主張する声もあったそうだが実現までは至らなかった。

 

日本政府が男性の育児休業取得率30%の目標を実現するためには、もしかすると韓国で実施されている「パパ育児休業ボーナス制度」2と「3+3親育児休業制度」3が参考になるかも知れない。経済状況の改善や賃金の大幅引き上げの実現がなかなか難しい現状を考慮すると、育児休業中の所得確保は子育て家庭においてとても大事な部分であるからだ。

 

上記の原因以外にも育児政策が子育て世代に偏っていること、結婚に対する経済的負担が大きいこと、社会保障制度や税制において、二人の親とその子どもで構成される家族以外の同性婚や事実婚など家族の多様性が前提となっておらず、十分な恩恵が受けられないことが少子化の原因として考えられる。

 


2 「パパ育児休業ボーナス制度」は、同じ子どもを対象に2回目に育児休業を取得する親に、最初の3カ月間について育児休業給付金として通常賃金の100%を支給する制度である。1回目の育児休業は母親、2回目は父親が取得することが多い(90%)ので、通称「パパ育児休業ボーナス制度」と呼ばれている。

3 韓国政府は2022年から、育児休業制度の特例として「3+3親育児休業制度」を施行した。「3+3親育児休業制度」とは、育児休業を取得する親の中でも、生まれてから12カ月以内の子供を養育するために同時に育児休業を取得した父母に対して、最初の3カ月間について育児休業給付金として父母両方に通常賃金の100%を支給する制度だ。