2022年の日本の出生率は1.26となり、過去最低を記録した2005年に並ぶ水準となった。日本の少子化はなぜ止まらないのだろうか。そこで本稿では、少子化の原因と、少子化対策における「財源」を確保する方法について、ニッセイ基礎研究所の金明中氏が詳しく解説する。
日本の少子化の原因と最近の財源に関する議論について (写真はイメージです/PIXTA)

少子化対策の財源に対する最近の議論

「こども未来戦略会議」では児童手当の拡充等の子育て世帯を支援するための多様な政策を打ち出しているが、それを実現するためには安定的な財源を確保することが大事だ。政府は6月13日に「こども未来戦略方針」(以下、方針)を閣議決定したものの、今回の方針では少子化対策の費用をどう賄うか等の財源の詳細については明記していない。

 

少子化対策の財源確保案としては「消費税の引き上げ」、「国債の発行」、「社会保険料に上乗せした支援金制度の創設」、「歳出改革」、「事業者が全額負担する子ども・子育て拠出金の増額」等が議論された。

 

「消費税の引き上げ」については、世論の反発を受けやすいとの意見があり、早々に選択肢から外された。

 

岸田首相は5月22日の記者会見で、少子化対策を巡る予算の財源について「消費税を含めた新たな税負担は考えていない」と言い切り、方針にも「消費税などこども・子育て関連予算充実のための財源確保を目的とした増税は行わない」と明記した。

 

一方、内閣総理大臣の諮問機関である税制調査会は6月30日に岸田首相に手渡した「わが国税制の現状と課題―令和時代の構造変化と税制のあり方―」で、「日本の社会保障制度においては、社会保険制度が基本であり、それを賄う財源は、原則として社会保険料になりますが、それを補完する財源としては、特定の世代に偏らず幅広い国民が負担を分かち合うことができ、税収の変動が少ない消費税がふさわしいものと言えます。

 

さらなる増加が見込まれる社会保障給付を安定的に支える観点からも、消費税が果たす役割は今後とも重要です。」と社会保障給付における消費税の重要性を強調した。報告書では消費税の引き上げについては特に言及していないが、消費税を引き上げて少子化対策の財源にすべきだと主張する専門家等が少なからず存在していることを考慮すると、今後も消費税引き上げやその活用に関する議論は続くと考えられる。

 

次は「国債の発行」であるが、日本の債務残高はGDPの2倍を超えており、主要先進国の中で最も高い水準であることを考慮すると、少子化対策のために国債を追加的に発行することはなかなか厳しい状況である。

 

このような状況のなかで、「社会保険料に上乗せした支援金制度の創設」が有力な財源確保案として浮上した。日本政府は2024年度から「こども・子育て支援加速化プラン」を段階的にスタートする予定であり、児童手当の拡充、育児給付金の引き上げなどを実現するための予算として毎年約3兆円の追加予算が必要だと見込んでいる。「支援金制度」はこの必要な財源の一部を社会保険料に上乗せして、社会全体で子育て費用を負担していこうという考えだ。政府の試算では社会保険料への上乗せ額は国民1人あたり月500円程度になると推計された。