2022年の日本の出生率は1.26となり、過去最低を記録した2005年に並ぶ水準となった。日本の少子化はなぜ止まらないのだろうか。そこで本稿では、少子化の原因と、少子化対策における「財源」を確保する方法について、ニッセイ基礎研究所の金明中氏が詳しく解説する。
日本の少子化の原因と最近の財源に関する議論について (写真はイメージです/PIXTA)

少子化の原因は?

合計特殊出生率(以下、出生率)の低下が止まらない。2022年の日本の出生率は1.26となり、過去最低だった2005年に並ぶ過去最低の水準となった([図表1])。韓国の0.78よりは高いが、OECD平均1.58(2020年)を大きく下回る数値だ。

 

[図表1]日本における合計特殊出生率の推移

 

なぜ日本では少子化が進んでいるだろうか。最初の原因として考えられるのが「未婚化や晩婚化の進展」だ。日本の場合も韓国と同じく、男女が結婚してから出産をするケースが多い。従って、未婚化や晩婚化が進むと、生まれる子どもの数に影響を与えることになる。25~29歳と30~34歳の男性の未婚率は1960年の46.1%と9.9%から、2020年には72.9%47.4%に上昇した。

 

また、25~29歳と30~34歳の女性の同期間の未婚率も21.7%と9.4%から62.4%と35.2%まで上がっている。国立社会保障・人口問題研究所が公開している『人口統計資料集(2022)』によると、50歳になった時点で一度も結婚したことがない人の割合を示す生涯未婚率は2000年の男性12.6%、女性5.8%から、2020年には男性28.3%、女性17.1%に、男性は約2.2倍、女性は約3.1倍も増加した。平均初婚年齢も夫、妻ともに上昇を続け、晩婚化が進んでいる。1975年に夫27.0歳、妻24.7歳であった平均初婚年齢は2020年には夫31.0歳、妻29.4歳まで上昇した。

 

[図表2]男性の年齢階級別未婚率の推移

 

[図表3]女性の年齢階級別未婚率の推移

 

少子化の2つ目の原因としては、若者の結婚及び出産に関する意識が変化していることが挙げられる。

 

国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとに実施している「出生動向基本調査」によると、18~34歳の未婚者のうち「いずれ結婚するつもり」と回答した割合は1982年で男性95.9%、女性94.2%から、2021年には男性81.4%、女性84.3%に低下した。

 

また、結婚相手紹介サービスを提供する株式会社オーネットが成人式を迎える新成人を対象に毎年実施している「恋愛・結婚に関する意識調査」でも、「結婚したい」と回答した新成人の割合は、ピークであった1997年の89.5%から2023年には78.6%まで低下していることが明らかになった。

 

[図表4]「結婚したい」新成人の割合

 

さらに、同調査では結婚したら「子供が欲しい」かを聞いているが、「子供が欲しい」と回答した割合は2019年の69.3%から2023年には64.1%に低下している。両調査から若者の結婚及び出産に関する意識が変化していることが分かる。

 

では、なぜ「結婚したい」若者は減少しているだろうか。国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」では、結婚意思のある未婚者に、現在独身でいる理由をたずねており、その結果をみると、25~34歳では、「適当な相手にまだめぐり会わないから」と回答した割合が男性43.3%、女性48.1%で最も高いという結果が得られた。次いで,「独身の自由さや気楽さを失いたくないから」(男性26.6%、女性31.0%)、「結婚する必要性をまだ感じないから」(男性25.8%、女性29.3%)の順であった。

 

財務省総合政策研究所が2015年に実施した調査では、「現在交際している人と(あるいは理想的な相手が見つかった場合)一年以内に結婚するとしたら、なにか障害になることがあると思いますか」をたずねており、男性も女性も「結婚資金(挙式や新生活の準備のための費用)」を最大の障害として、「結婚生活のための住居」を2番目の障害として挙げた。