2022年の日本の出生率は1.26となり、過去最低を記録した2005年に並ぶ水準となった。日本の少子化はなぜ止まらないのだろうか。そこで本稿では、少子化の原因と、少子化対策における「財源」を確保する方法について、ニッセイ基礎研究所の金明中氏が詳しく解説する。
日本の少子化の原因と最近の財源に関する議論について (写真はイメージです/PIXTA)

6月13日に「こども未来戦略方針」を閣議決定

政府は少子化の問題を改善するために、児童手当の拡充等「お金」の面で子育てを支える制度を次々と打ち出している。2023年1月からは「出産・子育て応援給付金」を施行し、妊娠期に「出産応援金」として5万円分、出生後にお子さま1人あたり「子育て応援金」として5万円分のクーポンを支給している。また、2023年4月からは出産育児一時金を既存の42万円から50万円に引き上げた。

 

さらに、政府は6月13日、こども・子育て政策の強化に向けた具体策を盛り込んだ「こども未来戦略方針」を閣議決定し、「若者・子育て世代の所得を伸ばさない限り、少子化を反転させることはできない」ことを明確に打ち出した。

 

政府は、次元の異なる少子化対策の基本理念として、(1)構造的賃上げ等と併せて経済的支援を充実させ、若い世代の所得を増やすこと、(2)社会全体の構造や意識を変えること、(3)全てのこども・子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援することを挙げており、今後抜本的に政策を強化する立場を明らかにした。

 

特に、すべてのこども・子育て世帯を支援する対策の一環として、来年度から児童手当を大幅に拡充することにした。改革の主なポイントは、(1)所得制限の撤廃、(2)支給期間の延長、(3)第3子以降の加算額の拡大だと言える。

 

現在、児童手当は0~3歳未満は月1万5,000円、それ以降は中学生まで月1万円が支給されている。また、第3子以降は「3歳~小学生」は加算され、月1万5,000円が支給される。但し、児童を養育する人(夫婦のうち所得が高い方)の所得が一定基準以上になると、児童手当は一律月5,000円に減り(特例給付)、養育者の年収が所得上限限度額以上の場合は児童手当が支給されないように所得制限が設けられている。

 

児童手当の所得制限に関しては、「所得制限を設けること自体が児童手当の制度趣旨に反している」、「世帯主の所得を基準とするのは不公平・不合理である」等の問題点が指摘されてきていた。そこで、「こども未来戦略会議」では「異次元の少子化対策」の一環として、児童手当の所得制限をなくすことにした。また、支給期間も現在の中学生までを高校生(18歳になった年度の3月31日まで)の年代まで延ばした。さらに、第3子以降は「3歳~小学生」は加算され、月1万5,000円が支給されているが、この期間を「0歳~高校生」に広げた上で、月3万円に引き上げることにした。

 

少子化が急速に進んでいる現状を考慮すると、所得の多い子育て世帯にペナルティになる「所得制限」の撤廃は妥当な措置だと考えられる。また、異なる少子化対策の基本理念のように、社会全体の構造・意識を変え、社会全体で子育て世帯を支援する「子育ての社会化」を実現するために努力する必要もある。