将来性を売りにしているスタートアップ企業。入社したときよりも数倍に企業が成長する可能性を持ち合わせていますが、ここ最近、求職者からは厳しい評価をされるようになってきたといいます。今回は、サーチ・ビジネス(ヘッドハンティング)のパイオニアである東京エグゼクティブ・サーチ(TESCO)代表取締役社長の福留拓人氏が、採用市場におけるスタートアップ企業と求職者それぞれの変化について解説します。
求職者から「夢はもういいのでキャッシュをください」の声…将来性を売りにするスタートアップ企業が採用合戦で惨敗するようになった理由【人材のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

夢ではなく現金を求める求職者

最近急に変わってきたのは、求職者が、「ドリームはもういいです、現金で出してください」と言うようになってきた点です。

 

例えば、現職までのキャリアで年収算定して、おおよそ1,500万円くらいの評価を得られる人材がいたとします(この方が大きな会社とスタートアップで悩んでいたとして、入った後の展開によって違うわけですから同じテーブルで悩むというのは無理がありますが、わかりやすい例でこうしています)。

 

以前のスタートアップは、1,500万円の評価の人であっても1,500万円を出せませんでした。その代わりに「固定給は800万円でいかがですか」さらに「不足分の700万円はストックオプションでどうですか」などと提案していました。

 

要するに、自社株の値上がりで補うわけです。「会社が上場したら持っている含み資産が猛烈に増えます。今は800万円しか出せないけれど、これを何倍にもするために一緒にがんばりましょう!」と会社は提示します。スタートアップに飛び込むということは、そういうことなのかと誰もが思っています。

 

ところが、すべてではありませんが、思ったより利益が出ていないというスタートアップが増えています。そこに金融市場の変化もあって、以前ほどスタートアップに投資が回らなくなり、経営環境が厳しくなってきています。

 

求職者にとってスタートアップの仕事は面白そうだし、そこに飛び込みたい気持ちはあります。しかし、「飛び込んでチャレンジするならストックオプションは要らないので、現金で自分の適正評価1,500万円を用意してほしい」というわけです。夢を追いかけるストックオプションは選択肢から除外されます。こういう求職者が急激に増えています。