事業所得として収入を計上したい人が増加
昨今、求職者の中でプライベート・カンパニーを設立し、そこに事業所得の形で収入を計上したいと考える人が増えています。これまで個人が受け取っていた給与所得を自分の法人に入れてほしいということです。
この背景は非常に単純なことです。最大の理由は会社設立のハードルが低くなり、ほぼゼロになったといっても過言ではない状態だからです。
ご存じかと思いますが、有限会社の新設はできなくなり、株式会社はかつて設立に高額な資本金が必要でした。しかし、今では1円でも設立可能(設立のための事務手数料は別途必要)になりました。「一家にひとつの法人格」のようなことも難しくない状況になっています。
要するに独立自体が容易になってきたわけです。この流れは20年ほど前から存在していたのですが、一気に普及してきたのは、この5~6年ではないでしょうか。その流れを振り返ってみましょう。
法人格を持つことによるメリット
第一に挙げられるのは「新型コロナウイルス感染症」の流行です。このコロナ禍の時期に多くの企業が雇用調整助成金を受け取りました。労働者を長期にわたり強制的に休ませた業界も多かったと思います。その際、従業員が食べていくために副業への従事を緩和し、むしろ推奨するような例もよく見かけました。
ところが、みなさまもご存じのとおり、2ヵ所以上の事業所から所得を得た場合、確定申告をしなければなりません。副業禁止の会社に勤務している多くの人がそうであるように、勤める1社からしか収入のない場合は一般的に「特別徴収」という形で企業が納税を担います。ですから、確定申告とは縁のない人が多いわけです。
しかし、勤務先の承認を得た上で、いろいろな副業に取り組む人も増えてきました。そのせいで確定申告がかなり普及してきたのではないかと思います。法人格をつくらないまでも、青色申告の形をとれば税法上のメリットを享受できます。
最近は連日のようにメディアを賑わせていますが、税金も高額になってきました。昔は「大台」といわれた年収1,000万円にサラリーマンとして到達しても、可処分所得を見ると「こんなに引かれるのか」というほど手取りが少なくなって、お嘆きの方も多いのではないかと思います。このような背景で副業(パラレルキャリア)の推進が主流になってきました。
こうした時代背景もあり、少し勉強すれば1社で給料をもらうより自分の法人格を持つことの利点が大きいことがわかります。事業所得の形で勤務している企業から法人に入金してもらうために、自分の法人から請求書を発行します。一見給与の形に見えますがそうではなく、法人が顧客から入金してもらうのです。
これで収入は給与ではなく事業所得になります。法人の事業所得ということは、法人の運営上認められている経費の計上ができるようになります。そうなると、サラリーマンではなかなか認めてもらえない経費を使えるようになります。
例えば自宅の面積を事業用と居住用に按分し、一定の面積を事務所等に使用することで経費として計上できます。またいろいろな備品が必要経費として認められるという利点もあります。そのような節税上のメリットが多いのです。